都市に緑、人にやすらぎを

花のコーナー 2019年01月

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花のコーナー

御園 和穂##

2019年01月 猪と萩

 新年 明けましておめでとうございます。
 
 北九州緑化協会「花のコーナー」への掲載は今年の3月で11年目に入ります。
 長い間、続けさせて頂けている事に感謝しております。
 
 昨年は暑い夏といつまでも寒くならない晩秋から、初冬12月にも時折お天気のよい日中は18℃前後の暖かい日などがありました。今年は暖冬だと言われています。過ごしやすい冬であることを願っています。

 
 年始めなので今回は干支の「猪」にまつわる話にしましょう。

 「猪」と言うと・・・
 近年、猪による農業被害は日本の東北北部まで拡大し、里山ならず街中まで猪が横行しているニュースを目にします。山での餌が乏しくなると、山を下りて里山の畑を荒らし食べ物を確保します。また、街中の残飯にも寄ってくるようです。
 猪や鹿、猿は農林水産省の野生鳥獣害でも発表されている危険獣になります。皆さまにおかれましては見かけても近寄らないでくださいね。
 このように嫌われものの猪ですが、古来、猪は「神仏の使い」とされてきました。猪というと「猪突猛進」と言われるように、迅速で素早い動きが出来るということから、「特別」なものに感じられていたのでしょう。

 こんなお話しがありました。
 『奈良時代、弓削道鏡(ユゲノドウキョウ=僧侶であり政治家)は当時の称徳天皇の寵愛を受け、太政大臣からさらに法王まで高位を与えられました。道鏡はさらに欲をだして皇帝の地位を望むようになりました。
 そのころ「道鏡を皇位に付ければ国は安泰」との宇佐八幡宮の託宣(神託ともいう:託宣・神託とは、人に神がかかり、意志を述べること:神憑り)を受けたと噂が流れ、称徳天皇は和気清麻呂に託宣の真偽を確かめに宇佐八幡宮へ出向くよう命じられました。
 宇佐八幡宮に赴いた和気清麻呂は、「皇室の血筋でない道鏡は掃い除くべし」との託宣を持ち帰り朝廷に直訴しました。
 このことにより、嘘がばれて道鏡の野望は阻止されました。
 これに怒った道鏡は和気清麻呂を大隅国(現在の鹿児島県)に追放し、追って刺客を遣わし清麻呂の暗殺を企てました。
 清麻呂は道鏡の送った刺客により足の筋を切られ歩けなくなってしまいましたが、その時に突如現れた三百頭ほどの猪に助けられ、猪の護衛で宇佐八幡宮に再度到達、宣託のお礼参りが出来ました。その後、神のお告げに従って霊泉に足をつけることで治癒することが出来ました。その後、称徳天皇没後道鏡は下野国(現在の栃木県)の薬師寺別当に流されました。その後この地で亡くなります。
 和気清麻呂は平城京に呼び物されて、平安遷都などに尽力しました。』
 このような話ですが、和気清麻呂を助けた猪が、霊猪(神仏の使い)としてあがめられたようです。

画像の説明

 北九州市の小倉北区妙見にある「足立山妙見宮(御祖神社)」は、和気清麻呂が足の治癒したことに感謝して清麻呂が創祀した神社だそうです。
 道鏡の刺客によって傷き、猪によって助けられ、再度宇佐八幡宮に参拝出来た際、神宮での神のお告げに従い現在の小倉北区足立山の麓の石川村(現在の湯川町)の霊泉に入ると、たちまち足は治ったそうです。その後清麻呂は足立山の山頂に登り、造化三神※に皇統安泰を祈られたそうです。
※造化三神(ゾウカサンシン):天御中主神(アマノミナカメシノカミ)、高皇産霊神(タカミムスヒノカミ)、神皇産霊神(カミムスヒノカミ)の三人の神。古事記に天と地が出来た原初の時の高天原になった神の事。
 また、「足立山※」の名前は清麻呂の足が治癒して立ち上がり「足が立った」というところから名付けられたそうです。
足立山:小倉北区にある標高597.8mの山で別名「霧ケ岳(キリガタケ)」とも呼ばれています。

画像の説明

 このような話から、足立妙見神社の入り口には「狛犬」ではなく「猪」が座しています。その他、各地の神社に神の使いとして「猪」を祭っている所があるようです。
 昔から猪は「山の神」として崇められていたようですね。
 現在は、足立山の麓には親子連れの猪が時々出没するようです。瓜坊(猪の子供)は可愛いですが、触ったり抱き上げたりしないでくださいね。近くに親がいるので気を付けて下さい。
 もともと猪は臆病な動物だとも聞いています。多分、猪も人間に遭遇すると驚くのでしょう。逃げてしまえばいいのですが、驚いて突進してくることもあるようです。
 もしも、遭遇してしまったら・・・、まずは騒ぎ立てず静かにその場を離れることをお勧めします。


画像の説明

 今回のテーマであげた「猪と萩」。
 これは「花札」に描かれている7月の役札です。もう数十年「花札」をやったことはありませんが、小さい頃祖母から「こいこい」を教わりました。今思えば「粋」な遊びだったのかもしれません。残念ながら覚えていないのですが・・・
 花札の絵柄の猪鹿蝶松月など「面白く美しい絵」だったように記憶していましたが、今、札を見るととても完結な絵柄です。
 今年の干支「猪」。で、なんとなく思い出して札を購入しました。





 
ハギ

画像の説明

学名:Lespedeza bicolor
マメ科ハギ属 落葉低木
和名:ハギ(萩)
英名:Bush clover Japanese clover
原産地:中国、朝鮮半島、日本
花時期:7月~9月

 ハギはヤマハギやミヤギノハギ、マルバハギなどの総称です。秋の七草のハギはヤマハギを指しているそうです。

ヤマハギ:日本や朝鮮半島に自生。H=1~2mほどで枝が枝垂れない。
ミヤギノハギ:園芸品種で最も多く栽培されている。H=1~2m。地際から枝垂れる。開花が6月~10月と早く「ナツハギ」とも呼ばれる。
マルバハギ:西日本を中心に分布し、葉の先端が丸い。8月~10月に開花。H=1~1.5m程度。枝先が枝垂れる。

 ハギは万葉の時代から現在まで、秋という季節感にピッタリの花木として愛されてきました。秋の七草の一つです。
 名前の由来は、ハギは古くなった株からもたくさんの芽をだすことから「生え芽」(ハエギ)と言われ、それが転じてハギに。後に、秋を代表する花なので「萩」という漢字が付けられたそうです。
 地際から細い枝を無数に出して、その枝に小さい葉を付け、葉の脇から長い花柄を伸ばし、蝶々のような花を付けます。
 決して派手な花ではありませんが、山あいの高原などに生え、庭園などでも添えの低木として季節の演出をしてくれる植物です。
 マメ科植物なので根粒菌と共生し、やせ地でもよく育ち、昔から道路斜面の治山や砂防目的にと地表保護植物のパイオニア植物※として利用されてきました。
※パイオニア植物:荒れ地に真っ先に現れる植物のこと

 戦後まもなくは、家畜の飼料として山から枝ごとハギを刈り取り、葉をむしり乾燥させ干し草に混ぜて食べさせていました。また、春にでる新しい葉は「萩茶」として飲まれ、枝は屋根材や庭園の袖垣や箒などに使われました。枝は乾燥させると堅くなります。この枝を箸としても利用されていました。
 根は干して漢方薬として使われ、咳止め、胃の痛み止め、下痢止めに効果があるそうです。
 年月が経つと、ハギの茎は木質化して堅く太くなります。品種にもよりますが直立はせず枝垂れます。最初は小さな株物でも徐々に大きくなり、しな垂れた枝が地面に着いてくると、邪魔になり紐でくくられた姿を見ることもあります。

 さて、花札では何故「猪と萩」の組み合わせなのでしょうか?

画像の説明

 花札は月ごとで4枚のカードが1セットになります(この4枚が猪とハギです)。
 ハギは万葉の時代から和歌や俳句で一番詠まれた植物の一つです。
 先にも述べましたが、やせ地で育ち、邪気を払う魔除け植物として親しまれてきました。
 また、枝は緑の時はしなやかですが、晩秋枯れてくるととても堅くなります。堅くなった枝は「使い箸」として宮中行事の際に使用されたそうです。
 猪は、摩利支天の使いとして崇められていました。
 摩利支天とは、陽炎を神格化した女神で、常に陽光の先を進みその実態を見ることはなく、時の前を進むので進路の障害や災難、災いを取り除くことが出来るとされています。その姿は三面六臂(サンメンロッピ)、3つの顔と6本の臂(腕)にはそれぞれ武器をもっていて、猪に乗っている姿です。
 戦国時代、武士の間では「勝利の女神、守り本尊」として崇められ、出陣の際には矢などに当たらず勝利出来るよう、鎧の中にお守りとして秘められていたそうです。現在でも開運の神とされ、亥年生まれの守り本尊ともされているようです。
 また、猪などの凶暴な動物にも休息の時があります。古来、萩=臥猪の床(フスドノトコ)として知られています。
 猪の寝床の事です。野生の獣も萩や萱を倒して、身を休めるということだそうです。花札の「猪と萩」の組合せは、このような事柄から描かれたのかも知れませんね。これは私の想像ですが!



 今年、残り数か月で「平成」が終わります。
 昨年の漢字は「災」でした。「平成」は新しい時代の始まりであったと思いますが、災害の多い時代でした。
 これから来る新しい「年号」で何かが大きく変わる事はないでしょう。先の事は分かりませんが、少なくとも今年は「災」がなくて「幸」の多い一年である事を願っています。
 今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

(19/01/01掲載) 

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