○ 日本の伝承切り紙
日本の切り紙のなかで代表的なものとして『伝承切り紙』と呼ばれるものがあります。正月神棚に飾るお飾りや御幣などはその一種です。白い和紙で作られ、神仏と人間とを結ぶための白い絆として扱われています。
伝承切り紙のなかでも最も変化に富んでいるのが『神楽用の切り紙』で、北は秋田から南は鹿児島まで、名称や図柄など地域の特色を見せて分布しています。宮崎県高千穂地方の夜神楽でも、祭場にはおびただしい数の『エリモノ』と呼ばれる切り紙が張り巡らされます。
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↑高千穂地方のエリモノ |
○ 中国の剪紙
中国では、民間工芸の一つとして現在でも切り紙が盛んにつくられ、護符として窓や障子に貼る習慣があります。
司馬遷の史記、西周時代初期の物語のなかに、「剪桐封弟」(青桐の葉を切り抜く)という故事があります。はるか昔人々の暮らしの中には、木の葉や樹皮を切り抜いて神にささげる風習があり、それが切り紙のルーツだと考えられます。現在目にすることのできる最古の剪紙は、南北朝時代の彫金芸術の版下として使用されたものです。
紙は加工しやすく切り抜くには最適な材料であることから、様々なものの型紙としてつくられていましたが、紙の普及に伴って、農村地帯の人々の暮らしの中で紙工芸として育まれていきました。
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↑中国の剪紙 |
○ おわりに
夕暮れ時の木漏れ日を絵に表してみようと思ったのがきっかけで、切り紙を作り始めて10年になります。紙を切り抜くだけの単純なものですが、知れば知るほど、奥深いものなのだと感じています。古代の人々が「樹皮や木の葉を切る」ことで自然に敬意を払ったように、自然と人との関わりについて、もう一度考えてみたいと思います。
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↑筆者の作品 「切り進み紙版画」 |