月見とススキと・・・
 庭の陽射しが随分と和らぎ「秋」本番ですね。
 前回ご紹介した「補植」や「冬への準備」は進んでいますか?
もう少し先の「話」なのでゆっくり進めていきましょう。

 日没も早くなり、秋の夜長も楽しんでみましょう。
暑い夏がすぎ、9月もまだ強い陽射しではありますが、少しは涼しいひと時。そして10月に入ると羽織り物が欲しくなります。

 日本や中国では、「月」を愛でるという古くからの習慣があります。
 日本では縄文時代から月を愛で、平安時代には貴族の間で舟遊びなど、直接月を見るのではなく水面に映し出された「月」を見ながら歌を詠んだり、お酒を飲んで楽しんだとされています。なんと風情のある遊び方でしょう。

 普通、「中秋の名月」は9月ですが、(旧暦8月・新暦では9月ごろ)空気が乾燥して、湿度も低くそれほど寒くない頃、私は10月上中旬がその頃だと思っています。
 観月には良い季節ですね。
この夜は、月が見える場所に祭壇を作り「ススキ」を飾って団子や里芋、枝豆、栗などを盆に盛り、御酒を供えて月を眺め、また、豊作を祈ったことからも別名「芋名月」などとも言われています。
また、十三夜は日本独特の風習とされており、食べごろの大豆や栗を供えたことから「豆名月」「栗名月」とも呼ばれています。
ヨーロッパでは満月は人の心を乱すようで、「月の女神が死を暗示する」とか「狼男が月をみて変身する」とか、眺めて楽しむ気分ではなかったようですね。

 月と「ススキ」。
秋の月見のお供えに、なぜ「ススキ」なのかはご存知ですか。
「ススキ」の「スス」は、葉がまっすぐにすくすく立つ事を表し、「キ」は芽が萌え出る意味の「萌(キ)」だと言われています。
また、収穫物を悪霊から守り、翌年の豊作を祈願する意味があるそうです。
                       (百科事典より)
 ススキ Miscanthus sinensis  イネ科の多年草草本類
 高さ1〜2m、根は短いがしっかりした地下茎をもち、多数の花茎を立てます。
葉は細長く、堅く、縁はぎざぎざした鋭い鉤状(カギジョウ)になっているので皮膚を傷つけてしまいます。夏の終わり頃から秋にかけて、茎の先端に長さ20〜30cm程度の数本に分かれた花穂を付けます。
 花穂は赤っぽい色をしていますが、種子には白っぽい毛が生え、全体が白っぽく見えます。沖縄では常緑になり高さ5m近くにもなります。
 日本では全国に分布し、日当たりの良い山野に生息します。
 植物遷移(ショクブツセンイ:裸地から草本の植物が様々にはえ最終草本になる様)では、ススキ草原は最終段階になるそうです。
 ススキ草原は放置すると、アカマツなどの樹木が侵入して、次第に森へと変化してしまいます。
 このため、草刈や野焼きを定期的に行う事で、すすき草原の状態を維持しているわけです。例えば、奈良の若草山で行われる「山焼き」はススキを野焼きします。北九州なら平尾台もそうですね。
 ススキは今が見ごろを迎えます。


(写真は9月17日 平尾台
         花穂の出始め)

 かつては、農家で茅葺き屋根(カヤブキヤネ)の材料に使われたり、家畜の餌としても利用されていました。
 農家の周辺にはススキ草原があり定期的に刈り取りをする場所があったのです。
 現在は茅葺きに利用しないため、ススキが荒れ放題になり雑木林となってしまっています。

 「秋の七草」に「尾花」があります。ご存知のようにススキです。
 花穂が獣の尾に似ていることから名づけられたとか。
 「萩の花、尾花、撫子の花、女郎花、葛花・・・・」万葉集で詠んだ七草。
 月には、ハギも合わせてススキを飾る所もあるようです。

 祭壇を設けてまではちょっと・・・という方には。
「月見そば」「月見うどん」は如何でしょう。シンプルな素材に卵を割りいれて、器の中の風情?かしら。
 北九州市は「焼きうどん」が有名ですね。焼きうどんに窪みを作り、中に卵を落として、ひっくり返して焼いたものを「てんまど」と呼んでいるそうです。
 天窓から眺めた月の姿だそうです。月見の変形ですか・・・。

 最近はススキ類(種類が沢山あります)もポットを園芸店で見かける事があります。秋から冬までのコンテナ植物として、コスモスと合わせたり、シュウメイ菊等‥と組合せ、少し和風の感じですが楽しめますね。
 コンテナも渋く焼き物あたりを使うと雰囲気がかわってきます。
周囲にとらわれずに様々なものを使って、その季節を楽しむのも「粋」ですよね。

 慌しい毎日の生活に、少しだけ「季節の醍醐味」を味わってみてはいかがでしょう。
 花や植物をせっせと育て愛でる事も大切ですが、その季節にある花や植物の存在意味や古くからの習慣なども見直してみてはいかがでしょう。
 結構、知らなかった事や子供たちへ伝えたい事がでてくるような。
 さて、ススキをどこぞへ観に行きましょうか。

 

御園 和穂

(08/10/01掲載)

 
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