<
マンリョウ、センリョウ
 新年明けましておめでとうございます。

 昨年の年頭に「穏やかで病気や怪我がない一年であって欲しい」と願い、 言葉通り何事も無く一年を過ごし、新しい年を迎えることができました。
 「卯年」卯は'ウサギ'で、「うさぎの上り坂」という諺があるように、良い方向に進む動物とされています。
 余談ですが、ウサギを捕獲しようとする場合は下り坂で追いかけるとつかまりやすのだそうです。ウサギは前足が短いので、上り坂の場合は後ろ足の蹴りもあり素早いのですが、下り坂になると短い前足では俊敏に動けない。とか・・・。
 今年は躍動感ある一年になりますように!どうぞ宜しくお願いいたします。

 今回はこの季節を彩る「赤い実」を付けるマンリョウやセンリョウをご紹介しましょう。
 写真は、雪ウサギならぬ雪ウサギダルマです。可愛らしかったので拝借いたしました。
 なぜか、目を赤い実で飾る事が多いようですね。
勿論、赤だけではありませんが、白の雪には赤が映える事も事実ですね。
 お正月の生け花の定番は松・竹・梅、そして菊や赤い実のマンリョウやセンリョウを活けます。縁起の良い植物とされています。

 マンリョウ(学名:Ardisia creneta)別名ヤブタチバナを指します。原産地は日本の山林、中国、インドに分布。
 ヤブコウジ科の常緑低木で、庭木や鉢植えなどで親しまれています。
 葉は互生で厚みがありギザギザし、茎の上に密集し、多数の実を葉の下につけます。
 7月ごろ白い花を咲かせ、花後丸い実がなり12月ごろから赤く熟します。
 実は落下せず、かなり長い間付いています。
古典園芸植物の一つで江戸時代には多様な
品種が作られていたそうです。


←マンリョウの花

 センリョウ(学名:Chloranthus glaber)
別名クササンゴと呼ばれています。
原産地は日本の山林(常緑樹林の下など)、朝鮮半島、インドに分布。
 センリョウ科の常緑低木で、ヒトリシズカと同じ仲間になります。
 江戸時代の初期から栽培され、生け花に多く使われてきたそうです。
 6〜7月に花を咲かせ、(黄緑色の花)その後、実を付け冬に赤く熟します。  葉は対生し、肉厚ではありませんが光沢があり、マンリョウとは異なり葉の上に実を付けます。


 ←センリョウの花
 どちらの植物もよく似ていますが、見分け方は実の付く場所が違う事と葉のつき方が違います。
 また、漢字で書くと マンリョウ→万両 センリョウ→千両 旧貨幣の呼び方が付いている樹木なのです。
縁起の良い樹木とされている由縁でしょう。
 さらにはヒャクリョウ(百両)、ジュウリョウ(十両)、イチリョウ(一両)と呼ばれる樹木もあります。 ご存知でしたか?
 ヒャクリョウ(百両)、カラタチバナの事を指します。
 江戸時代のタチバナはとても高価で、百両以上のお金でないと手に入れることが出来ず「百両金」と呼ばれていたそうです。
 名の由来はそこから来たのでしょう。
 ジュウリョウ(十両)、ヤブコウジの事を指します。
 江戸時代から古典園芸植物としても品種改良が行われ、現在でも40種類以上の品種があります。
 草丈は20cm程度で実が付いているのかどうかも分かりにくい植物なのですが、その昔は紫金牛(シキンギュウをコウジと読ませた)と呼び、かなり珍重されたらしく、明治時代には大流行し、1鉢が家1軒分の価値が付いた事もあったそうです。

 イチリョウ(一両)、アリドオシの事を指します。
 「千両、万両在り通し」と呼ばれ、生け花などではこの三種類が入ることで縁起物とされています。
 訳すと、「金は、千両も万両も一年中あるよ!」という事だそうです。
 なんか凄いですよね〜
 本来の名はアリドオシと呼ばれていますが、棘が鋭く、「蟻をも突き刺す」と言う事からこの名前が付いたそうです。


←アリドウシの棘
 旧貨幣の名が付いたのは、果実の大きさや樹木の背丈とも言われています。
ヤブタチバナはセンリョウより実が大きく、沢山付けるので格付けではセンリョウより上でマンリョウになったとか。
 センリョウを除く他の植物は実が下に付きます。センリョウは鳥などに実を食べられやすく、マンリョウは食べられにくいので「実がしっかり残る」とか。
 ヒャクリョウ、ジュウリョウは背も低く、実の数も少ない事から、とか。
諸説様々な言い回しがあるようです。
 じつに面白い!

 「赤い実」から随分横道に反れて?しまいましたが、冬を代表する植物です。
生け花を始め、庭園の片隅に熟した赤い実は心温まる感じがします。
 もう一つ、めでたい植物として「松・竹・梅」があります。
 お鮨屋さんに行くと、「特上、上、並」などとお品書きに書かれていますが、場所によっては「松・竹・梅」となっている場合もあります。
どこかで、上下の見分け方で使用しているのですね。
ただ、植物の名を用いた方が上下の表現が美しく聞こえる事も事実ですよね。
 本来、植物には上下はなく、全て平等なのですが・・・。

 ちなみに「一両」って、現在の貨幣で考えるといくら位なのでしょう?
調べてみました。
 1,700年代の幕府レート金は金一両=銀60匁(もんめ)=銭4,000文を基本としていたようですが、実際には時価相場で交換されていたそうです。
 ある小説の中では、女中を1年雇って給金一両二分(年間40万程度)が相場だと書いてありました。
 また、もっと分かりやすく記載されていた物がありましたのでご紹介します。
 お風呂屋さん8文=200円、そば・うどん16文=400円、納豆4文=100円、
たばこ(14g)8文=200円、すいか40文=1,000円等など
 江戸時代ではその時々で貨幣価値がかなり異なるようです。
 答えはでませんが、江戸時代中期くらいで一両=20〜30万円前後であったのではないかと思われます。

 世の中は少しずつ上向きの傾向のようですが、まだまだ不景気です。
「卯年」でウサギのように飛び跳ね、縁起物の植物を側に植えて、気分だけでも豊かに!
 如何でしょう?

御園 和穂

(11/01/01掲載)

前回へ バックナンバー 次回へ