ツワブキとヤツデ(冬の花)
 今年は11月の中旬頃まで比較的暖かい日があったり、極端な大雨にみまわれたり変な天候が続きました。
 紅葉も今一つ。そろそろ、落葉してしまいます。
 とはいえ、本格的な寒さが到来し今年最後の月になってしまいました。

 パンジーやビオラ、サクラソウなどの冬から春の草花はすでに紹介済み。
今回は同じ花でも、和花を紹介しようと思います。
 厳しい寒さの中で開花し、庭園などで花を咲かせる「ツワブキ」。庭園でも花壇でも使用される「ヤツデ」です。

 「ツワブキ」 学名:Farfugium japonicum キク科ツワブキ属の多年草。
和名:ツワブキ 漢字で石蕗、艶蕗と書きます。
 秋の終わりから初冬にかけて、庭先や竹やぶなどに茎をすっと伸ばし、黄金色の鮮やかな花を咲かせます。

 周囲の紅葉も終わり、花も少なくなった時期にいっきに開花し、艶のある葉と鮮やかな花は寒々とした庭園に温かさを演出してくれます。
 ツワブキは漢字で「石蕗」または「艶蕗」と書きます。
「石蕗」(イシフキ)は、岩などの間から生えている蕗なので、イシフキと呼ばれ、「艶蕗」(ツヤフキ)は、葉に艶がある蕗なので、ツヤフキと呼ばれた物が漢字に置き換えられたようです。
 本州福島・石川県以西、四国、九州、琉球諸島に分布し、私達の生活環境から山地の日陰や海岸などで多く見られます。
 
 栽培の歴史は江戸時代に発行された日本最古の園芸書物『花壇綱目』(カダンコウモク)に「つは」の名で記載され、社寺や茶庭などで使われていた記録が残っています。
 また、ツワブキは観賞用だけでなく食用にもなります。
 花、蕾、葉など全てを食べる事ができ、九州では「キャラブキ」の名で知られるよう若い葉柄を佃煮にして食べる他、葉も細かく切り佃煮として現在でも食べられています。
(ちなみに4月〜6月くらいのツワブキはほのかな苦味があり佃煮にするとよいそうです。その後は茎も硬くなり苦味が増すそうです。)
 江戸時代には凶作に備えて乾燥保存、葉には抗菌作用があるので腫れ物や切り傷の薬になり、根は煎じて胃腸薬としても使用されていたという記録が残っています。
 ツワブキは観賞用としても改良が進み、江戸時代には斑入りや葉の周囲が波打ったような物などが出来上がっていたようです。
 近年、再び斑入りなどの品種に人気が高まり、さらに新しい園芸品種も増えてきているようです。
(写真:左 花茎が伸び始める様子   右 花芽が見えます 図鑑より参照)
 ツワブキの花は秋口から、葉の下の方から茎を持ち上げたような形で伸び上がり、その後、伸びた茎の先に花を付けます。
花後の様子 中央:種
花後の様子 中央:種
 蕾が膨らみかけるころ、摘み取り天ぷらや酢のもにしたり、お酒に漬け込むとリキュールになります。
 背は低く、葉が茂るのでグラウンドカバーとしての利用もお勧めです。
 もちろん鉢植えも可能です。
 鉢植えの場合は、暫く育てているとその鉢の大きさに見合った姿かたちに育ってくるのです。例えば小さい鉢であれば小さい葉をつけ、軸も細くなります。
 根の張れるスペースに合わせて、株の大きさを変化できるのかも知れません。
 面白い性質ですね。
 こちらのツワブキは、沖縄県の琉球諸島に分布する、「リュウキュウツワブキ」です。


 
 ツワブキの変種で、扇方、もしくは菱形の大型の葉をし、色艶も良いです。
 ちなみにグリーンパークの果樹温室(第3温室)の中に生育しています。
「ヤツデ」 学名:Fatsia japonica ウコギ科の常緑低木。
和名:ヤツデ、漢字で八つ手、八手と書きます。
別名:天狗の葉団扇、鬼の手などとも呼ばれています。


 ヤツデも厳しい寒さの中大きく葉を広げ、茎の先端に白っぽい花を付けます。
 東北地方南部の本州から南西諸島に分布し、山林に自生する日本原産のものです。
 古くから庭木として馴染みも深く、また、霜にあっても枯れたりしない生命力の強さや、大きな葉の形から邪悪なものを防ぎ、退散させる力があると信じられてきました。
 厄を祓う、という事で玄関前などに多く植えられてきました。
 20cm以上もある葉は、深い緑色で光沢があり厚みもあり、縁はギザギザがあります。見分ける事は容易ですね。
 葉は切れ込みが入った掌状で、和名の「八手」通り8枚になっているかというと、ほとんどの葉が5・7・9と奇数になっています。 不思議ですね〜
 「八手」の八は末広がりで縁起の良い数字でもあります。手は大きな葉で千客万来、縁起を担いでいるのでしょう。
 最近、周囲ではあまり見かける事が少なくなったような気がしますが、海外ではアオキなどと合わせて日陰に強い植物として花壇などでは人気の高い植物の一つです。
 ヤツデは常緑中低木の扱いになりますが、あまり幹は太くならず、真っ直ぐに伸びる性質があります。
どちらかというと、蔦のように伸びるようです。
 また、葉が落ちた幹の部分に不思議な形が残ります。
 ブーメランのような跡とその中に丸い跡。これは、葉の切れ込みの数と同じなのではないか、とも言われていますが定ではありません。(写真参照)
 周囲の樹木が葉を落とし、うっそうとしていた場所が明るくなってきた頃、花を咲かせ受粉し翌年の春に黒い実を付けます。
 花などが少なくなる時期を選んで・・・植物の生育サイクルはまちまちですが、今更ながら、その不思議さに毎回関心してしまいます。
 どこにでもありそうな植物ですが、じっくり観察する事は少ないと思います。
葉の形、茎の模様など何故そのような形になったのか?解明はされてないようです。たまにはじっくり向い合ってみるのも良いかも知れませんね!

 普段と変わらない1ヶ月なのですが、「12月」となると何故か慌しくなります。
この1年も植物を通して様々な事を学びました。
 地域に合った、その場で美しく咲き誇れる植物を探し出し育てる事の大切さを改めて考えさせられた1年でした。
 「植物の力を信じる」。
 
 今年1年有難うございました。

御園 和穂  

(11/12/01掲載)  

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