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「風薫る五月」。気象上では6月ごろから「夏」とされていますが、二十四節季では5月の上旬頃の「立夏」を境に「夏」と言われ、1年の中で一番過ごしやすい新緑の美しい季節ですね。
九州では麦の穂が出て、北海道あたりではジャガイモや豆の種まきが始まり、北日本では桜が咲き始めます。
この季節は草木が茂り、気持ちの良い風が吹いて、晴天が続きます。いつもより少し遠くまで歩いてみたくなりそうです。
ガーデナーにとっては春からの植替えなど、忙しい毎日だと思います。
園芸店では初夏から草花が勢ぞろいで賑やか時期ですね。
今回は、この時期に切花でも、鉢物でもよく出回るカーネーションを紹介します。
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「カーネーション」で思いつくのは、皆さんご存知の「母の日」です。
「母の日」は日頃の感謝を込めて、母親にカーネーションなどの贈り物をする日です。
もともとアメリカのアンナ・ジャーヴィスさんという女性が、母親の葬儀の際、生前母親が好んだ白いカーネーションを捧げ、参列者に配った事から始まったとされています。
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この話を聞いたデパートの経営者が、5月の第二日曜日を母に感謝する日と提案した事で全米に反響があり、1912年当時の大統領ウィルソンによって「母に感謝する日」として国民の休日に定められました。
日本では1949年、東京都が母の日大会を開催し、日本キリスト教会がこの話を広め、製菓会社の「母の日」のキャンペーンの結果、次第に日本でも定着したようです。
5月の第二日曜日は、母親が健在な子供は「赤いカーネーション」を胸につけ、母親に花束を贈り、母親をなくした子供は「白いカーネーション」をつけるようになっていたような記憶があります。現在では「赤いカーネーション」に統一しているようです。
カーネーション
学名:Dianthus caryophyllus L. ナデシコ科ナデシコ属の多年草。
英名:carnation 和名:カーネーション、オランダナデシコ
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原産地は南ヨーロッパ及び西アジアの地中海沿岸と言われています。
花の特徴は、花の径が10cm程度の大型のものから小輪タイプのものまで様々な大きさがあり、花色は赤、白、ピンク、黄色、紫、絞り等など殆どの色を取り揃えています。
甘い香りがし、豪華な花をつけます。
開花の時期は7月から8月が基本ですが、現在の園芸品種は四季を通して楽しむ事ができます。
名前の由来は様々ですが、花の色の赤を「肉の色の花」(ラテン語で肉をcarn)といった説や花の冠飾りを意味するコロネーション(coronation)が訛ってカーネーションとなった説などが有力です。(corona:ギリシャ語で王冠の意味)
この花は紀元前から愛されていたようで、文学の世界でもシェークスピアの「冬物語」の一説にも登場します。
また、ラファエロなどの巨匠も自分の絵の中にカーネーションを描き込み、その美しさを示したようです。
花びらが重なった重厚で華やかな花びらや姿は、芸術家達にとって魅力的な存在だったのでしょう。
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カーネーションは、約300種ほどあるナデシコ属の中で最も園芸的に発達した種類で、セキチクなどとの幅広い交雑によって今日のカーネーションが生まれました。
16世紀には「カーネーション」という名が定着したと言われていますが、祖先についての明確な記載は残されてなく、紀元前300年ごろのギリシャの植物学者テオフラトスが命名した「神の花(ダイアンサス)」からではないか、など未だ不明な点は多いのですが、ともあれ古来から私達の目を楽しませてくれた花のようです。
カーネーションはノルマンディー公がイギリス征服の際(1066年)に持ち込んだとも、十字軍によって東方から持帰ったとも言われています。
16世紀頃から栽培や品種改良が始まり、ルイ14世のヴェルサイユ宮殿には300種のカーネーションが咲き乱れていたという記述が残っています。
19世紀に入り、温室栽培が主流になってきた頃、四季咲きの品種ができあがりました。
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現在流通している大輪のカーネーションの90%はシム系といい、1938年アメリカの園芸家のウィリアム・シムが作りだした品種なのです。
日本へは江戸時代初期にオランダ人を通して伝わったとされています。
当時は「あんじゃべる」「オランダ石竹(セキチク)」と呼ばれ、1960年代に生産が増え始め、現在ではキクやバラに並んで人気の高い切花になっています。
これらの花を渡来したカーネーションと交雑し、現在のカーネーションが生まれたとされています。セキチクやカワラナデシコの花は一重ですが、葉や茎の姿はカーネーションとよく似ています。
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セキチク
学名:Dianthus chinesis
セキチクの一品種に「テルスター」などの聞きなれた花の名前があります。
平安時代に中国から渡来。大正時代にはカーネーションもセキチクと呼ばれていました。
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カワラナデシコ
学名:Dianthus superbus L.var.
秋の七草の一つで、九州・四国、沖縄諸島に自生しているナデシコ。古典園芸植物の一つで現在では減少方向で殆ど見かけることはなくなりました。 (写真:植物図鑑より参照)
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「母の日」には切花を初めとして、多くのカーネーションが出回ります。
切花だけでなく最近では鉢物で店頭に並ぶ姿もよく見かけるようになりました。
切花は花瓶に挿して飾り、出来れば毎日水を替え、茎の下の部分を切り戻す(切り口が腐ってくるので)事で長く楽しめます。
切花に対して鉢物は意外に育てる事が難しく、最初は花も咲いていますが蕾が咲かなくなり全体に枯れてしまっている姿をよく見かけます。
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原因の一つとしては水の与え方が悪かった場合もあります。
また、花を早く咲かせるため、温室栽培が行われますが、出荷の際、運搬等による環境の変化に上手く対応できず生育が悪くなってしまう場合もあります。
鉢物で頂いた場合で、花が沢山咲いている鉢の場合は、すぐにラッピングを外し、直射日光には当てず、カーテン越しの室内で育てます。
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(サカタのカタログより) |
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また蕾が沢山付いている鉢物の場合は、充分に日の当たる場所で育てます。
日照不足になると蕾が開かないまま終わってしまう場合があります。
鉢の中が乾いていたら、鉢の底から水が流れるくらい与え、水を切ってから室内へ入れてください。(戸外の場合はそのまま)
咲き終わった花は早めに摘み取り、蕾が咲くようにしましょう。
ただ、高温多湿に弱いので、真夏は直射日光を避け半日陰で育てましょう。
例えば、室内であれば、カーテン越しの涼しい場所、戸外であれば木陰で風通しの良い場所へ置いておきましょう。
花は水に弱いので、開花中は雨に当てないようベランダなどで育てる事が無難だと思います。
カーネーションは気温が25℃を越えて来ると花つきが悪くなり、30℃を越えると株全体が弱ってきます。
耐暑性のある品種もありますが、基本的に暑さに弱いという性質は変わらないと思います。ちなみに冬の寒さにもそれほど強くはないので、冬場は陽だまりのベランダに取り込むか室内で育てます。
水は乾いたらタップリ与え、花や蕾には水をかけないよう注意しましょう。
花や蕾は水に弱く、カビが発生する事があります。開花中は株元に静かに与えてください。
また、生育期間中は1ヶ月に1回程度化成肥料を株元に与えるか、液体肥料があれば、1週間に1回程度の割合で与えましょう。肥料の時期は3月から7月一杯くらいです。真夏、真冬は生育が弱くなるので与えません。
増やし方は挿し芽もしくは種まきです。
挿し芽は4〜6月、9〜10月が適期です。茎の節からでてくる脇芽を使うのが一般的です。5〜6cmくらいのびた脇芽をかき取って、下の方の葉を取り除き川砂とバーミキュライトを混ぜた土に挿します。脇芽はナイフなどで取るより手の方が病気にかかる心配がありません。
根が出るまでは半日陰で用土は乾かさないよう注意をしましょう。
育ってきたら鉢に植付け、春に挿した物は翌年から花を咲かせます。
夏越しに不安がある場合は春に挿し芽で苗を作っておくと、鉢物の株より、苗の方が夏越ししやすいです。
また、実生系のものは種から育てる事が出来ます。種まきの適期は9月下旬頃です。芽が出て本葉が4枚以上になったらポットへ植え替えます。
冬が来る前に充分に根を張らせておきましょう。
冬の間、2回程度肥料を与え、春になったら鉢へ植え替えます。
簡単に育つものではないかもしれませんが、折角頂いた鉢物であれば充分に育ててあげてください。また、切花の場合でも長く楽しめますので、こまめに水管理をしてあげてくださいね。
今年の「母の日」、いつも用意される方はいつものように。あまり気にされてなかった方は、1本のカーネーションを用意してみませんか。
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