冬を彩る植物
 一年を締めくくる十二月がやってきました。暦が新しくなるだけなのですが、何故か気忙しい時期です。
 木枯らしも吹き、寒さが身にしみる季節です。
 花壇やコンテナの植え替えもそろそろ終わり頃でしょう。まだなら日差しのある暖かい日にやっつけてしまいましょう。

 今回は「冬を彩る植物」を紹介します。通常植物園の冬場は「閑散期」なのでお客様の入場は少ないようですが、ハボタンやツバキだけではなく、落葉後の樹木の枝の色合いや幹の様子や花後に付く実を楽しんでみては如何でしょうか。今回はこの時期にしか見ることが出来ない植物等紹介しましょう。
10月から11月開花のバラ
まずは、皆さんお馴染みのバラ。
各地で9月上旬から11月にかけて「秋のバラ展」が開催されます。四季咲きのバラが春に引き続き秋冬の見頃を迎えます。
春に比べると花も小ぶりになりますが、気温が下がってくる事で色合いも良くなり、花も長く保てるようになります。しかしながら、12月に入るとさすがに寒くなるのと同時に花も少なくなり淋しい状態になります。
 冬のバラ園、覗いて見た事ありますか?
 バラは開花後、花柄摘みをすることが原則です。その後、冬に剪定をする事で毎年美しい花を咲かせます。いくら四季咲きであっても冬の間花を咲かせる事はしません。
 ただし、この時期に美しい姿を見る事が出来るのは、一季咲きの原種のバラがたくさん植えてあるバラ園です。


 バラの実(花はボニカですが、種はボニカの台木のノイバラから出たものです)
 (Rosa multiflora ノイバラ)
 一季咲き(原種も含む)は春しか開花しませんが、晩秋から冬にかけて、葉の紅葉や実の姿を楽しめます。また新しい枝芽は確認出来ませんが、赤く若い枝もすてたものではありません。(若いバラはトゲが赤いんですよ!)
 バラは花だけが注目されがちですが・・・枝も葉も実も楽しめるのです!
 ちなみに写真の赤い実、ローズヒップはクリスマスリースの装飾用として使用します。ノイバラは沢山実を付け、トゲが少ないので装飾用に向いています。

 次は、来年の花や葉の準備をしながら冬を越す樹木です。公園や庭園、街路樹、と様々なところに樹木が植えられています。
 樹木は、夏に木陰を作り、街並みを構成し、緑豊かな環境や季節毎の変化を楽しませてくれます。しかし、あまりにも身近にありすぎて「当たり前」の存在になってしまっていませんか?
 そんな樹木を冬の間も楽しんでみましょう。

ソメイヨシノの冬芽(植物図鑑参照)
 サクラの樹
 (Prunus×yedoensis matsum.)
 幹肌は光沢があり、独特のツルンとした表皮と細かい横節が特徴です。
 加工品などでも親しまれている幹肌です。
 サクラは12月に寒さに合うと、花付きが良くなると言われています。
 この時期は翌年の春の花や葉になる冬芽も充実してきます。
 ソメイヨシノの冬芽は他のサクラに比べると全体に毛深いのが特徴でしょう。
 葉が落ちてしまっても、幹肌と冬芽でソメイヨシノである事の判断は出来そうですね。
 イロハモミジの樹
  (Acer pulmatum)
 晩秋まで紅葉が楽しめます。紅葉の名所には必ず植えられている代表的なモミジです。
 この時期、落葉樹の葉のお掃除は大変! 1本の樹から何万枚という葉が落ちるのですから、掃いて集めて袋へ入れて・・・。他の落葉樹は落ち始めると一斉に散ってしまう感じですが、いつまでも葉が付いているのがモミジではないでしょうか?
 樹皮は淡灰色でわずかに縦縞の模様が入っています。 1年生枝は緑から赤紫色。
 枝の先端には冬芽が見られます。実は2つ芽が並びます。これは来年枝が二股に分かれる(分岐)部分なのですよ。また、冬芽の付け根は、縁に沿って毛が生えています。
 サクラと一緒で寒さをしのぐためのマフラーみたいなものでしょうか。
 面白いでしょ♪
 サルスベリの樹
  (Lagerstroemia indica L.)
 真夏に元気よく花を付ける代表的な樹木です。
 幹はツルンとしていて、迷彩模様風(私はそう呼んでいます)が特徴です。
 これは樹木が成長に伴って古い樹皮のコルク層が剥がれ落ち、スベスベの樹皮が表面に現れ更新します。
 「ツルン」としている幹は、つる植物が巻きにくいようになっていると言う説もあります。
  来年の春、伸びた枝先に花を咲かせるタイプなので、この時期に剪定されていれば丸坊主かもしれませんね。
 ちなみに剪定の際、枝の先が「こぶ状態」になっている場合がありますが、樹形をスッキリ見せたいのなら、思い切って「こぶ」の部分を切り落としておくと良いそうですよ。


 サンゴミズキの樹
 (Cornus alba var. sibirica)
 本来ミズキ科の樹木は大木になるタイプがほとんどですが、サンゴミズキは大きくなっても3m程度の株物です。
 5〜6月に小花が沢山集まって咲きます。晩秋には落葉し、枝が「サンゴ色」なのが特徴です。
 日本の花壇や庭園ではあまり見かけることはないようですが、生け花をされる方であればご存知だと思います。
合わせて、枝が「黄色」になる特徴のオウゴンミズキがあります。(Cornus stolonifera'flaviramea')
※色分けをする際、「黄色」の色合いを「ゴールド」や「オウゴン」などと呼びます。
 オウゴンミズキもあまり見かけませんが、生け花では使用されているようです。
 切花を扱うお花屋さんには並んでいるようです。ウィンドウショッピングの際、生け花があったら探して見てください。結構使っていますよ。(写真:植物図鑑参照)
 少しですが、樹木を挙げてみました。落葉してみないと分からない枝の美しさや幹肌の美しさを。
 ガーデンデザインをする際、「冬のガーデン」も忘れないように考えたいですね。
 
最後は12月といえば「クリスマス」。
 皆さんはどのようなイメージがありますか? イルミネーションやクリスマスツリー、サンタさんにプレゼントや七面鳥にケーキなどでしょうか。
 私はクリスマスリースがスタートになります。
 本来クリスマスリースは壁にかけるのではなくテーブルに置き、緑のリースに4本のローソクを立て、1週毎に灯りをつけ、※アドベントの間は紫、クリスマスになると赤いローソクに代えます。
 ※アドベントとは クリスマス25日の4週間前の日曜日から当日までをアドベント(待降説)と呼び、準備をする期間となります。「アドベント」は到来や出現という意味があります。

 フレッシュなリースをつくるなら、ヒイラギが定番でしょう。
 西洋ヒイラギ(llex aquifolinm)
 モチノキ科の植物で、日本のヒイラギに良く似ていますが、分類では全く違う植物です。
 緑の濃いとても美しい照葉で、冬になると赤い実を付けます。
 英語名がホーリー(holly)。クリスマスホーリーの愛称でも呼ばれています。
 赤い実はとても苦く、鳥も食べる事が少ないとの事、また、小さな鳥はこのトゲトゲの葉の中に隠れ、自分より大きな鳥から身を守る事もするそうです。
 樹の下には、色んな樹の芽が出るそうですよ〜(小鳥の糞から発芽ですね)
 その他ではモミやトウヒ、コニファー類、ローズマリー等でも楽しめます。
 赤い実を付ける樹木や植物も沢山あります。アオキやウメモドキ、ナンテン、ノイバラ、サンキライ等。
 これらの植物を、探しながら見て回るだけでも素敵な時間が過ごせそうですね。
 「冬を彩る植物」はまだまだ沢山あります。寒くなるとどうしても閉じこもり気味になってしまいます。
 そんな時は、暖かそうな日を選んで、いっぱい着込んで、お庭や公園、周辺の野山までお散歩がてら散策してみては如何でしょう?
 冬ならではの植物の姿が楽しめますよ!

 あっという間の1年、今年も有難うございました。



御園 和穂  

(12/12/01掲載)  

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