ミモザ
 二月は一年で最も寒い季節でもあり、そんな寒い中でも一早く春を感じさせてくれる祭事や植物があります。
 2月3日は「節分」。文字通り季節の分かれ目で、4日は「立春」です。
 また、2月8日は「御事始め」(オコトハジメ)と言われ、12月の「御事納め」(オコトオサメ)の両日は物忌みの日にあたり、徘徊する魔物を退治し、針を持つことを戒められた日で「針供養」の日になります。
 この日は針仕事を休み、使えなくなった針を集め、豆腐やこんにゃくに刺し、神棚に供えたり、川に流したりして針に感謝をこめるとともに、針仕事が上達し、怪我がないよう祈願します。
 二十四節気の「雨水」で雪氷が解け始め、ゆっくり春がやってきます。下旬には「梅」も開花します。「春の訪れ」を感じる頃ですね。

 今回は、寒い時期に咲き始め、一番早い「春」を思わせてくれる花木の「ミモザ」を紹介します。

ミモザ
 学名:Acacia decurrense var. dealbate
 マメ科ネムノキ亜科アカシア属。常緑高木 和名:フサアカシア。
 原産地:オーストラリア 開花時期:2月〜4月。
 香りがよく、香水の原料としても使用されています。
 日本においては数種類のミモザが生育していますが、原産地のオーストラリアでは700種を超える品種があります。
 本来、「ミモザ」と呼ばれる植物はオジギソウを指し、学名:Mimosa pudica 南アメリカ原産のマメ科ネムノキ亜科、オジギソウ属です。
 葉に刺激を加えると、葉を閉じる植物で、古代ギリシアの身振り人形「ミモス」:パントマイムの前身の 語源と言われ、動きが似ている事から「ミモザ」という名前が付きました。(写真:黄色い花がフサアカシア、紫の花がオジギソウ)
 花の色は異なるのですが、姿形がよく似ている事からフサアカシアを「ミモザ」と呼ぶようになったようです。
 フサアカシアは(上段写真参照)濃い黄色の花を付け、葉は銀色の灰がかった緑色。少し地味な雰囲気です。(ヨーロッパでミモザと言えばフサアカシアの事)
 最近では葉が銀色で、花も明るい黄色の派手な花を付けるギンヨウアカシアの方が多くみられるようになりました。
ギンヨウアカシア
ギンヨウアカシア
 アカシア類は成長が早く、特にギンヨウアカシアは生育旺盛、花付き良好なので好まれます。
 ただし、幹が柔らかいため風の被害を受けやすいので(折れてしまいます)、枝折れを防ぐ剪定をしながら樹形も整えます。
 フサアカシアとギンヨウアカシアの区別は、葉の数で見分けます。
 偶数2回羽状複葉(ウジョウフクヨウ)といい、葉の形態の事で小葉が左右に並んでいるものです。
葉の付き方(ギンヨウアカシア)
葉の付き方(ギンヨウアカシア)
 フサアカシアは小葉の数が30−40対でギンヨウアカシアは10−20対なので見分けはつきます。
 またマメ科なので空中窒素の固定(※)能力があり、やせ地でもよく育ちます。
※空中窒素固定とは:空気中には多量に存在する窒素分子を反応性の高い窒素化合物に変換する事。マメ科の植物は根に「根粒」を持ち、窒素化合物を生産する根粒菌の共生細菌を宿しているため、土壌を肥やす働きをする。
 やせ地でも生育ができる樹木なので、埋立地の工場などで、緩衝帯用の植栽をする際、苗木の中にアカシア類を入れ、生長の早さと根粒菌の育成を目的として植えていました。
 ある程度、周囲の苗木が大きくなった時点でアカシア類は切り倒していた記憶があります。(定かではないのですが)
 銀色の葉と、枝垂れている枝いっぱいに丸くて小さい花を沢山付けるのが特徴で、花盛りの時期は樹木全体が花で覆われ、まっ黄色になります。
1月の下旬の蕾 3月上旬の開花した姿 3月上旬の開花した姿
1月の下旬の蕾
3月上旬の開花した姿
 明るい黄色なので、一瞬にして「春の訪れ」を感じます。これが好まれる由縁なのかもしれませんね。

 実は私がミモザを植えて育てたのは、10年くらい前。
 知ってはいましたが、庭木のイメージが薄く特別関心もなかったように思います。(埋立地の工場以外では)
 どちらかと言うと・・・「ミモザ」という名前は、ケーキなどの上にトッピングされた砂糖菓子やミモザサラダが先でした。
←砂糖菓子とサラダの「ミモザ」です。(クックパットより参照)
 砂糖菓子は核になる部分はミモザの花を(実際に使っているそうです。知らなかった・・・)使って、「砂糖を絡めた」もので、春先のスィーツとして店頭に並びます。
 ミモザサラダはゆで卵の黄身をザルのような細かい目を通してサラダの上に散らしたものです。
 どちらも、「ミモザの花」の雰囲気を醸し出していますよね。
 
 ミモザの木が一般に公園や庭園に植えられるようになったのは、ここ10年くらいなのではないかと思います。芝生の鮮やかな緑とミモザの黄色い花はよく似合うんです。
 ただし、要注意な事があります。根から根粒菌という物質を出す分、窒素栄養が十分にあるので、枝がよく伸びて幹も太くなります。
 花がたくさん付いている時期や葉が茂っている時期はほんの少しの風でも折れたり、枝が裂けてしまったりします。生長が早い分、枝がよく伸びるので細やかな剪定も必要になります。
 剪定の時期は花が終わった頃から7月一杯を目安にされてください。
   (木の大きさにもよりますが、植付けて3年以上経った木の場合)
 昨年切った枝先から新たな枝が出て、その先に花を咲かせます。高さは好みですが、途中の混んだ部分は枝抜きをし、全体に伸びた枝を切り詰めます。
 花芽分化は8月〜9月。8月以降は枝の切り詰め等の剪定は行わないようにしましょう。あまり茂りすぎた場合は枝を抜いてください。
 葉の色が良くない場合には、4月か5月に化成肥料を少し与えます。本来は、自ら体内で窒素分を作る以上、施肥は必要ありません。管理は剪定を除けば特に手はかかりません。
 身近で入手可能なミモザは高木性で自然樹形がほとんどですが、品種がたくさんあるので、通信販売などで、矮性タイプや株立ちタイプを入手して、生け垣や鉢植えでスタンダード仕立てにして楽しんでみるのも良いでしょう。

←ミモザのスタンダード仕立て(カタログより参照)
その他の品種もご紹介しましょう。
 サンカクバアカシア(三角葉アカシア)
 学名:Acscia cultriformis
 葉が三角形で樹高は3m程度。株立ちで小型なタイプなので狭い場所でも生育は可能です。
 一般的なミモザが開花した後、3月に入って開花します。
 日本ではあまり見かけませんが、夏に開花する、ウェスティータ。
 学名:Acacia vestita
 葉は丸く、ごく短い毛に覆われていて、8月から9月に開花します。
 どこで見たのか・・・覚えていないのですが、春一番でみる他のミモザの花の雰囲気とは少し異なります。
 最後に細葉のアカシアです。  10年前にフサアカシアを注文したのですが、新しい品種を植えてみませんか、と言われて、名前も定かではないミモザを植えました。
 背は高く枝はちょっとした風で折れ、花は薄い黄色のような白色でちっとも美しくない・・・。
←今時期(1月の下旬から2月一杯)から、ボヤーっと薄い黄白色の蕾が見え始め、2月中旬からチラッと咲いた後(期間が短く開花に気が付かない事が多い)、花が落ちるので開花したことに気が付きます。その後、葉が入れ替わる時期を迎えて、細い葉がいっぱい落ちます。
 切り倒せばいいのかもしれませんが、夏場の緑陰と細い葉が風に揺れると「涼しさ」を感じさせてくれるので可愛いがってしまいます。
 ミモザは各所で見る事ができます。(目立つので、気が付くと思います!)
 鉢植えでも、地植えでも育てられます。生活スタイルにあった、大きさやタイプを選んで、植えてみるといいかもしれませんね。
 育てるにあたってもう一つ注意点がありました。
 ミモザはマメ科の植物でこの科の植物は移植を嫌います。根が真下に伸び、細根があまりありません。そのため直根を切ってしまうと生育できなくなってしまうのです。
 鉢から地植えにするのは、根を崩さないように丁寧に掘り取れば大丈夫。
 最初から地植えにする場合は、植え付けする場所をきちんと決めてから植えつけましょう。

 2月は寒さがピークを迎え、暖かさが少しだけ顔をだし、「三寒四温」ですね。

 14日はバレンタインデー。
 好きな人にチョコを渡して気持ちを伝えてもよし、美味しいチョコがいっぱい出回るので自分のために購入してもよし、パッケージが可愛くて「つい」買ってしまってもいいかもしれませんね。

←スタンプタイプのチョコです。可愛いでしょ♪
 お菓子を持って、暖かくして公園へ行ってみませんか。春が少しだけ顔を覗かせているかもしれませんよ。

御園 和穂  
(14/02/01掲載)  

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