ハボタン
 新年明けましておめでとうございます。

 年が改まり、心機一転「今年はこれをやろう!」と決心された方もいるかもしれませんね。
 私は・・・。決心ではありませんでしたが、穏やかで病気や怪我がない一年であって欲しいと願っています。今年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 今年最初は、おめでたい紅白のハボタンの話から始めましょう。
 年末から立つ門松の足元や冬の花壇には欠かせない「ハボタン」はどんな花なのでしょう。
 私は小さい頃、ハボタンを「キャベツ」だと信じていました。母が庭の花壇に植えていたハボタンを、冷蔵庫代わりにキャベツを置いていると思い込んでしまったのです。そうなると、世の中の花壇は全て冷蔵庫だった事になるのですが・・・。

 ハボタン 学名:Beassica oleracea L.var.acephala DC.f.tricolorHort
      和名:葉牡丹、牡丹菜、花キャベツ
      英名:ornamental cabbage, ornamental kale, flowering kale
 アブラナ科、一年草の草花として取り扱いをしています。
 名前の由来は、葉を牡丹の花に見立てたもの(百科事典より)。耐寒性に優れていて、冬の花壇を彩り、門松の添えなどに利用されています。
ハボタンの花
ハボタンの花
 葉色が鮮やかで赤・ピンク・白等で色の少ない季節には打ってつけです。花は黄色のアブラナ科特有のもので4枚の花びらを付けます。
 花が咲く事を「トウがたつ」といい、葉の姿からすると観賞としてはあまり対象にはされず「トウがたつ」前に抜かれる事が殆どですが、近年ではトウが立ち、節が伸び葉が密集する姿を好む方も増えてきました。
 その後育てていくと樹のように枝が伸びてきて、その先端にハボタンが付く姿を踊りハボタンといいます。
 ハボタンは結球しないケールを観賞用に栽培される内に品種改良されたものとされています。(定かではありません)
ケールの姿
ケールの姿
 ケールは鎌倉時代の中期または江戸時代前期に渡来したという記録が残っています。
 江戸の中期以降は園芸ブームに沸き、草花の斑入りや葉変わりなどが珍重され、ハボタンは紅白の二色が特に好まれたようです。
 ※ケール 地中海沿岸が原産。リョクヨウカンランとも呼ばれ、
        キャベツとは異なり結球しない。栄養に富み、
        ビタミンも豊富で青汁の材料として利用。
 当時の博物学者が記した「本草正正譌」(ホンソウセイセイカ)で牡丹菜、葉牡丹と記載されているのが文献上初と言われています。と、するとハボタンは「古典園芸植物」とも言えるかも知れません。
 ※古典園芸植物とは   江戸時代に日本で育種、改良、独自の発展をした園芸植物。
                 また明治以降美的基準において栽培、育種されている植物の総称。


  明治以降冬の園芸植物として海外にも紹介され、現在では世界中で栽培されています。

 品種は多く、葉の形や色合いに特徴を出してきましたが、1990年の大阪花博で切花用が紹介されるなど、姿形に変化が出てきました。
 葉が滑らかなタイプは「東京丸葉」と呼ばれ江戸時代からの直系にあたります。これに縮緬性のケールを再び交配させ、葉の先が大きく縮れる「名古屋縮緬」ができました。
 さらにこの二つを交配させ中間を取ったものが、葉が波を打っている「大阪丸葉」が生まれました。1980年代になると、葉が縮れて深い切れ込みの「切れ込み葉」も出てきました。
東京丸葉
東京丸葉
大阪丸葉
大阪丸葉
名古屋縮緬
名古屋縮緬
切れ込み葉
切れ込み葉
 ハボタンは花壇・コンテナ等で冬の定番です。
 ツグミ、白ハト、紅ハト(丸葉系)紅スズメ、白スズメ(縮緬系)、紅クジャク、白サンゴ(切れ込み系)等お馴染みの品種です。
 直径30cmくらいの大型種から直径15cmくらいの小型種もあります。
 ある程度の花壇であれば、大型種の形や色合いでかなりのバリエーションが出来ます。ハボタンだけで作っても素敵です。小型種と合わせても優しい感じに仕上がります。
花壇で使うのか、コンテナで使うのか、用途によって使い分けると楽しめますね。
 ハボタンは葉の姿を観賞してもいいですし、トウが立つまで楽しむ事もできます。珍しい品種等があると花まで楽しんで、そして「種を採ろう」と思われる方も多いのではありませんか。
 一つ注意です。ハボタンは自家不和合性を持つため、他のアブラナ属に近い植物と交雑しやすく、種を取って播種しても同じものが出てこない可能性が高いのです。
 ※自家不和合性 特定の他の固体、他の系統の株とでなければ有性生殖が成立しない。
 一般に販売されている新しい品種の多くは一代交配種(F1種)といわれ、かけ合せた親の良い所だけを取った品種として1回きりで使用します。
 現在、野菜類の多くはF1種です。また草花でもマリーゴールド、パンジー、ビオラ等がそうです。種を買った時は袋をよく見てくださいね。

 最後に栽培のポイントです。
 種を購入して播く場合は、7月〜8月の上旬くらいに播種します。
種は2〜3日で発芽しますが害虫の大好物です。一度播種した時「芽が出たから」と喜んでいたら数日後全て無くなってしまった事がありました。
 薬剤はあまりお薦めしませんが、折角「育てよう」と思った瞬間無くなってしまうのは辛いものです。その時は少し使ってみてもいいかもしれません。
 播種後、アセフェート系の粒剤をまいておきます。
 苗の時期は半日陰に置いて、成長するにつれて少しずつ光に当てるようにします。生育期間中は十分光に当ててください。
 苗の時期で植付ける場合は根が張るまで十分に水を与えます。その後は乾燥気味に育てます。
 肥料は植え付け時に元肥として土に混ぜておきます。10月以降は肥料を与えません。色が付き始める時に、特に窒素分の多い肥料を与えると葉の色づきが悪くなったり、葉が巻き始めたりします。(播種した場合)
 苗、購入の場合は11月頃から出始めます。この場合は植え付け時のみの肥料で大丈夫です。
 お手入れは、生育していくにつれ下の方の葉が痛んできます。時々大きくなりすぎてだらしない葉や黄色くなった葉は取り除き姿を整えてください。

 これからが冬本番です。
 寒いとつい背中を丸めて縮こまってしまいます。
 寒さに強く、姿かたち、色合いとバリエーションの多いハボタン。
 元気に育つ植物を眺めて明るく過ごしたいものです。

 ちなみに「ハボタン」を食べてみました。
 生をそのままでは硬くて変な感触、千切りもボソボソした感じ。ドレッシングなどで誤魔化すと食べられない事はないようですね。
 煮た方が柔らかくなるかと思ったのですが。炒め物が一番のようです。
 結論としては、食用植物のケールやキャベツなどと同種なので食べられない事はないようですが、食用に改良された野菜とは比較してはいけない。
 体に害はないようですが・・・。(食べたハボタンは無農薬のものです)
 みなさんはしないでくださいね。

御園 和穂

(10/01/04掲載)

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