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 今年は例年になく暑い夏でした。
 10月に入っても日中の気温は高く、このまま秋がこないのでは?と思っていましたが・・・やっと季節が秋らしくなってきました。
 梅雨までは雨も多く、その後急激な気温の上昇と晴天続き。
 人間も植物にも厳しい夏でしたね。
 今回はこの季節に合わせて「紅葉」について。
 随分前に、秋も深い時期だったかと、熊本高森の山沿いでそれは見事に紅葉したフウの木を見ました。
 まだデジカメもなく、写真に収めることもできませんでしたが目に焼きついた素晴らしい紅葉でした。

 「紅葉」は樹木類が落葉する前に葉の色が変わる現象の事を言います。
 一般的には落葉樹のものが有名で、一斉に紅葉する様子は目を奪われます。
 黄色い葉、赤い葉、様々ですが、一応にして紅葉と呼びます。
 実際には「なぜ葉の色が変わるのか?」その理由は諸説ありますが、明快な答えはないようです。
 春は南から「桜前線」が始り、秋は北海道の大雪山から「紅葉前線」が南下してきます。
 一日の最低気温が10℃以下になると葉の色が変わり始め、さらに5℃以下になるとさらに紅葉が進みます。
 美しい紅葉には条件もあります。
 ・昼夜の気温の差が大きいこと
 ・夏が暑かったこと
 ・夏に十分な雨が降ること
 ・湿気が少なく乾燥していること  などです。
 紅葉の名所は条件のあった山間部が殆どです。さて今年はどうでしょうか?
 
 日本人は『紅葉』を「こうよう」と呼びますが、「もみじ」とも呼びます。
 通説として、秋口の霜や秋雨の冷たさに揉みだされるようにして色づくすがたから「揉み出るもの」→「揉み出づ」→訛って「もみづ」で「もみじ」になったようです。でも素敵な言葉ですよね。
 これからの季節は紅葉狩りに出かける方も多いと思います。
 この習慣は平安の頃の「風流」から始ったとされており、「狩り」は草花を眺める事を意味していますが、平安の時代には実際に枝を折り、手の平にのせて観賞していたそうですよ。
 
 私達も風流に「紅葉狩り」に出かけられたらよいのですが、中々そうはいきません。
 街中で見過ごしてしまう身近にある「紅葉」を少しご紹介しましょう。

 イロハモミジ(学名:Acer palmatum)カエデ科カエデ属の落葉高木です。
 日本では一番多く見られるカエデの仲間で紅葉の代表選手です。
 葉は掌状に深く切れ込みが入り、和名のイロハモミジは、この切れ込みを「いろはにほへと・・・」と数えた事が由来とされています。
 同じ仲間ではヤマモミジなどもあります。
 5月頃花をつけ、果実は1つの花に2つつけます。
イロハモミジの花後(果実)
イロハモミジの花後(果実)
イロハモミジの紅葉
イロハモミジの紅葉
 写真は果実ですが、竹とんぼのような翼があり、夏ごろ風でヘリコプターのように舞い散ります。
 紅葉は緑から赤。山間部で見るような感じにはなりにくいですが・・・
 
 モミジバフウ(学名:Liquidambar styraciflua)マンサク科フウ属の落葉高木です。別名アメリカフウ。
 北アメリカ南部から中央アメリカ原産で、日本へは大正時代に渡来したそうです。シンボルツリーや街路樹としてよく見かけます。
 樹皮に特徴があり褐色をおび、若木はコルク質の稜があります。
 
 
 〜稜〜
 枝の上部に出来る事が多く、横や下にもできます。
 よく見ると、コルク質の部分が層になっています。この層の数で年齢が分かるとか。(6層なので6才)
 モミジバフウの仲間にはフウ属のタイワンフウがあります。
 見分けが付きにくく、総称してモミジバフウと呼ばれているようです。
 見分け方はモミジバフウの葉には5〜7裂に切れ込みがあり、タイワンフウは3裂。
モミジバフウの葉
モミジバフウの葉
タイワンフウの葉
タイワンフウの葉
 今年はこれで見分けがつきますね。
モミジバフウの実 タコマ市のアメリカフウ
 モミジバフウの実です。タイワンフウも同じような実が出来るようですが、残念ながら見たことがありません・・・
 葉が赤くなり紅葉はとても美しい樹木です。(紅葉はタコマ市のアメリカフウ)
 
  最後に黄色く色づく、イチョウ。
 イチョウ(学名:Ginkgo biloba)イチョウ科イチョウ属の落葉高木です。
 和名の由来は通称として、葉が「アヒルの足」に似ている事から中国語の鴨足:イアチアオが訛ってイチョウになったとか。
 イチョウの学名についても「銀杏」を「ぎんきょう」と読んだ事からGinkgoと筆記、製本時に誤植され現在に至っているとか。
 日本語では「銀杏」(ぎんなん)と読みますが、本来は音読みで「ぎん・あん」。
訛って「ぎんなん」になったそうです。
 意外にいい加減なものですが、使っているうちに当たり前になってしまいました。
 また、イチョウは「生きている化石」植物の一つです。
 世界中で1種類しか生存していません。
 約3億年前(古生代後半)に出現し、中生代に最も繁栄したという記述があります。
 その当時は様々な種類もあったそうですが、中生代末までに多くの恐竜とともに滅んでしまったそうです。
 日本の化石の記録では約200万〜100万年前まで知られていますが、その後地球の寒冷化に伴い絶滅したと考えられているそうです。
 最後にイチョウは精子で繁殖をします。
 雌雄異株はご存知だと思います。
 春に雄花から花粉を飛ばし、花粉が若いぎんなんの内部に取り込まれると卵が作り始められ、それから約4ヶ月後、生長したぎんなんの内部で卵は熟成します。花粉は花粉管を伸ばし、その中に精子を作ります。
 その後、精子と卵は受精します。種子植物でこのような形態を持つものはイチョウとソテツ類だけなのです。(平瀬作五郎著書参照)
 東京:外苑前のイチョウ


 イチョウはミステリアスな樹木のようです。
 イチョウの実。(ぎんなん)
 樹木についている際はオレンジ色の皮が周囲についています。
 熟し落下するのですが、漆のような成分が含まれているため、皮膚の弱い方は触ると皮膚炎を起こしたりします。
 その後、水につけ皮を取り除き乾燥させるとぎんなんになります。
 (写真:辞典より参照)
 身近に「紅葉」と言われる樹木は沢山あります。
 街路樹をはじめ公園樹など、目を向けてみませんか?
 もちろん、紅葉を楽しむ為に行楽へ出かけるのも良いですよね。

 最近、北九州市の街路樹の雰囲気が変わったような気がします。
 以前のような枝のぶつ切り(もちろんしなくてはならない場所は別ですが)なども減り、樹形にあったやさしい剪定になったのではないでしょうか。
 落葉樹が近くにある方はこれから大変な時期かもしれません。
 1本の高木から落ちる「葉の量」は凄いものです。でも、季節のものとしては、春の新芽、花をしめ、夏は木陰を作り、樹種によっては実も楽しめます。
見方次第で重要な樹になります。
 
 月末はThanksgiving Day(収穫感謝祭)です。日本人には馴染みの薄い言葉ですが、秋の実りに感謝するときです。
 暑い夏を乗り切り、少し体調も良くなってきた事でしょう。
 美味しいものを食べ、短い秋を堪能したいですね。

御園 和穂

(10/11/01掲載)

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