寒い季節が過ぎ、多くの植物が新たな生長を始める候になりました。
 また、虫たちも暖かさに誘われ地上へ這い出し、モンシロチョウが飛び始めるのもこの時期からです。
 「春分」が過ぎる頃からは日も長くなり、少しずつ暖かさも増してきます。本格的な「春」の訪れです。

 今回は、3月から4月にかけて植付けを行い、初夏から楽しむ宿根草のご紹介をします。前号、前々号は冬の間に欠かせない作業を紹介しました。元気を取り戻した花壇の土や鉢の土は春からの植物の植付けの準備は整っています。
園芸店に出かけると沢山の植物が揃う時期でもあります。

 最初に「宿根草」とは?
 一度苗を植え付けると、ほぼ毎年その草花の開花時期が来ると花を咲かせ、株を大きく太らせながら、また、子株を増やしながら生育する植物の事をいい、植付けの適期は春、もしくは秋になります。ボーダー花壇、玄関前のアプローチやコンテナなど、一年草との組み合わせで、さらに華やかに演出できます。
 まずは、植物の特徴を知ってから苗の購入をしましょう。
 宿根草と呼ばれる植物は大きさも様々。草丈や株の張り方、葉の大きさ等、花だけを楽しむのではなく姿形も鑑賞するものまで種類が豊富です。
 もちろん、様々な役割をもっています。
たとえば、もっとも大型種のアカンサスなどは高さが1.5m〜2.0m程度、葉は地面から1.0m位茂ります。(写真:アカンサス 植物図鑑参照)
 葉張りも1.0m程度の大きさに育ちます。
 アスチルベやアスターなども大型種の仲間になりますが、葉の付き方や花の咲き方等様々です。
 苗で購入される場合は、その植物の特徴を知り、植付ける場所の広さを確認した上、また、開花時期に購入する事で特徴を捉える事ができます。(※注意:園芸店で開花株を購入の際は、自然状態より少し早めに出回ります。)
 宿根草は落葉性のものと常緑性のものと二通りあります。落葉性は冬が来ると地上部を枯らし、休眠して春に芽をだすタイプやギボウシのように鑑賞後、地際に休眠芽をだして冬越しするタイプなどがあります。
 常緑性はツワブキなどのように、冬の間でも緑の葉を付けたまま過ごすタイプ。また、冬の間に開花し、夏から休眠に入るタイプもあります。
 設計する上でも休眠の状態によって、他の植物との組み合わせが異なってきます。基本、植物は全般に日当たりを好むタイプがほとんどですが、半日陰を好むタイプ、日陰を好むタイプなど生育環境も様々です。
 耐寒性や耐暑性も特徴の一つ。その植物の原産地によっても異なりますが、 寒さに強くても、夏の暑さに弱く枯れてしまう場合もあります。その逆も言えますよね。どちらかといえば、高温多湿の夏場を乗り切れるかが鍵かもしれません。宿根草の特徴は大まかにあげると上記のような事でしょうか。
 あまり触れたくない部分ではありますが、宿根草の欠点も知っておきましょう。
 宿根草は植えっぱなしで構いませんが、植え付け環境が良い場合は株を太らせてテリトリーを拡大し続けます。と言うとことは、周囲に植えつけた草花を枯らしてしまう事になるのです。ある程度で株の拡大を(子株も)制限して、ある時期が過ぎたら株分けや根を掘り上げ、テリトリーの調整をします。
 また、植えた場所はその植物に占領されます。永久にとは言いませんが、葉が枯れても、根株が残るので、その場所のみが空いてしまうという事です。
 大型種の場合、個人のご家庭では難しいかもしれませんが、一年草とは異なり、育ち方や生育場所、開花時期等が決まっているので四季を通じて、欠点も一緒に楽しめるよう計画しましょう。
 宿根草って「ちょっと難しそう、面倒かな?」と思われたかもしれませんが、花壇はもちろん、大型のタイプばかりではありませんので、コンテナでも十分に育ちます。今年から挑戦してみませんか。

 具体的に植物をあげて育て方や管理をご紹介しましょう。
 ボーダー花壇
(見頃は4月〜7月を目指して)
一番手前:ムルチコーレ、ブラキカム、ナデシコ等
中段:カンパニュラ類、スカシユリ、
 キンギョソウ、ルピナス等
一番奥:ソリダスター、デルフィニュウム、アスチルベ、カスミソウ等 
他は、葉物のカキドウシやラミウム、ギボウシ、アジュガ、ヘデラやヤブラン等など。
 宿根草などの場合、ボーダー花壇などで使われているのが一般的ですが、お庭の大きさや配置によって、印象的なイメージが演出できます。
 私が園芸をはじめた時に最初に出会った植物が「カンパニュラ」でした。
 学生寮前のボーダー花壇中央を飾っていた植物で、鮮やかなブルーが印象的でした。
カンパニュラ・メデュウム
カンパニュラ・メデュウム
カンパニュラ・グロメラータ
カンパニュラ・グロメラータ
カンパニュラ・ラクティフローラ
カンパニュラ・ラクティフローラ
カンパニュラ・ポンテンシュラギアナ
カンパニュラ・
ポンテンシュラギアナ
 カンパニュラの仲間は世界の温帯北部に300種以上が分布しており、栽培されている多くは毎年花を咲かせる宿根草です。
 学生寮前のカンパニュラは、カンパニュラ・メディウムで宿根草ではなく、二年草タイプでした。春に種を蒔いて翌年の春に花を咲かせ枯れるものです。ある程度育った株が冬の寒さにあたって始めて開花するタイプです。
 宿根草では、カンパニュラ・グロメラータは高さが60〜80cm程度で、葉は卵形で互生し、茎からすぐ葉がでます。花は茎の頂部から咲き始め、葉の脇に付けます。青紫色の星型の花で「星咲きカンパニュラ」とも呼ばれています。
 北九州あたりでは、真夏の直射日光を避け、半日陰で、風通しをよくすることが肝心です。
 細かい根が20cm以上地下に入ります。水はけ、保水の良い土地を好みます。
  同じ青紫色の花でも、さらに鮮やかな花色で頂部にピラミッドのように花を咲かせボリュウムのあるタイプが、カンパニュラ・ラクティフローラです。
 直立性なので切花などにも適しています。
 ヨーロッパのボーダー花壇では定番です。カンパニュラの仲間の中でも丈夫で育てやすい性質をもっています。夏場の強い西日などが避けられる場所であれば大丈夫。根は深く入るので、花壇を耕す際には深めに準備しておきましょう。(写真:花図鑑参照)
 写真のカンパニュラ類は花色がブルー系ですが、グロラメータは最近ライラックピンクやコンパクトで花を沢山つけるタイプも出てきています。ラクティフローラは、白、ピンク、ライトブルーなどの色があります。
 花壇用のカンパニュラを紹介しましたが、コンテナやハンギング用であればベルフラワーなどが一般的です。(カンパニュラ・ポンテンシュラギアナ)
 青紫のベル状の花を付け、こんもりと茂ります。
 花壇の縁取りでも使用しますが、夏の暑さに弱く、コンテナやハンギングなどの方が適しています。
 盛夏では日よけをし、風通しを良くしてください。肥沃な土壌を好み、少し乾燥気味に育てます。(乾燥しすぎるとハダニが付くので要注意)
 種子が出来ないので、10〜11月に株分けします。
 花壇の場合は周囲に樹木などがあって、午後から半日陰が出来そうな場所を選び、隣にさらに大型種の植物を配置したりしながら調整をするとよいでしょう。日当たりを好むタイプも沢山あります。

 ホリーホック(タチアオイ)などは大型種で、花が下から上へ向って咲きます。高さは200cmくらいまで育つものもあり、一重や八重咲き、手のひらサイズの花と艶やかで存在感のある植物です。
ホリーホックとカンナなど
ホリーホックとカンナなど
 花色は白、ピンク、赤、絞り、黒と様々。写真のホリーホックは黒花です。
 手前のカンナはまだ小ぶりですが、オレンジの花色。斑入りの葉のカンナでも素敵でしょうね。とてもインパクトの強い花壇に仕上がります。
日当たりと水はけの良い場所を好み、耐寒性、耐暑性も強く丈夫です。
 茂りすぎるのを避けるため、毎年株分けをする必要があります。数年放置すると生育が悪くなり、姿かたちが崩れます。春先3月中頃に株分けも兼ねて、植替えをお薦めします。
 元肥はタップリ与えて、花が終わったら秋に切り戻して冬を越しましょう。

 アスチルベ、ルドベキア、エキノプスも少しだけ日の当りや風通しを考えてあげれば充分に育つ中型タイプの植物です。
アスチルベ、ルドベキア、エキノプス等
アスチルベ、ルドベキア、エキノプス等
 アスチルベは耐寒性、耐暑性にも強く、病害虫も殆どなく栽培はしやすい植物です。(左記写真中央白い花)
 できれば、真夏は木の陰になるような場所が好ましく、肥沃な土地を選びます。
 多数の小花が集まって大きな穂になり、かためて植えつけると見栄えがします。花色は多数あり切花でも楽しめます。切花の場合は花が開花したものを使われてください。蕾の場合は水あげが悪く、開花せず枯れてしまいます。
アスチルベ
アスチルベ
 株分けは秋か春に行い、3芽ほどに切り分け、芽が隠れるくらいの浅めで植え付けをします。株のためには花が終わったら早めに切戻し、種をつけさせないほうが良いでしょう。冬場は足元に腐葉土やチップなどで覆ってやると良いでしょう。
 組合せはアジサイ類やムラサキツユクサ、ユリ類などと合わせると素敵ですね。
エキノプス
エキノプス
 エキノプスは冬の寒さには強いのですが、夏場の高温が少し苦手。(上記写真アスチルベの左上)
 写真でも、樹木のすぐ横の背の高い植物がエキノプスです。
 鮮やかな青色の球形の花をつけ、高さは100cm近くまで大きくなります。葉がアザミのような切れ込みがあり別名ルリタマアザミとも呼ばれています。
 花がゆらゆらと揺れる姿は、花壇の中でも愛らしい存在です。
 高温多湿が苦手なので植えっぱなしではなく、数年で消えてしまうので、種を蒔きながらの更新をお薦めします。(春もしくは秋に種まき)  水はけを良くするために、少し高く植えつけます。
 
上記写真中央の黄色い花はルドベキアです。
 草丈も30cm〜150cmと品種によって様々です。丈夫で育ちやすく、日当たりの良い場所から半日陰まで、肥沃な土地であればどこでもよく育ちます。
 高性種は葉張りもあるので間隔を充分にとって植えつけます。何年も植えたままにしておくと、こぼれ種で広がり、テリトリーを荒らすタイプです。侵入した株は堀上げ、種からでた芽は抜き取りましょう。
 花色は黄色が主体で中央に黒い縁取りが入る品種や黄色だけの品種もあります。
 宿根草はそれぞれの植物で育て方が少しずつ異なりますが、基本は秋もしくは春に株分けをし、花が終わったら切り戻す。割と肥沃な土地を好みますが、肥料は緩効性肥料を与えることで元気に育ちます 

今回は3月に植え付け、初夏から盛夏くらいまで咲く宿根草を紹介しました。一年草の草花と組み合わせて、緑の葉ものと組み合わせて、さらには樹木との組合せもできるのが宿根草の魅力の一つです。
 今年は1年を通して、宿根草にチャレンジしてみては如何でしょうか。
 
 今月の下旬からは「桜」が咲き始めます。
 寒い冬をジッと過ごしたパンジー、ビオラ達もさらに大きく育って花を咲かせる時期です。まずは、肥料を与え、水やり、花柄摘みも小まめに行いましょうね。


御園 和穂  

(13/03/01掲載)  

前回へ バックナンバー 次回へ