春さかり
 3月は急に寒くなったり、20度を超える日があったりと、天候が安定しない月ですが、例年に比べると暖かい日が多く、サクラの開花も早かったです。
 4月に入って気温も安定し、草花が一斉に咲き誇りはじめました。
 サクラは種類によって花が散ってしまったもの、散り始めた種類と様々ですが、初春の一瞬を楽しませてもらいました。「春」本番はこれからです!

 今回は「春さかり」。一番目に付きやすい「黄色い花」をいくつか紹介したいと思います。
 なぜ黄色?と思われるかもしれませんが、なんとなく・・・私にとって「春」の最初の色が黄色なのです。
 黄色は有彩色の中で1番明るい色で、知性を意味する色で人に喜びを与える色だと言われています。見ているだけで心を弾ませ、楽しい気分にさせてくれます。暖色、興奮色、膨張色、注意を促す色などのイメージ効果もあります。
 寒さが緩み、暗いイメージが一変して感じられるのは、そういった黄色効果によるもので、「春」の最初の色なのかもしれません。
 
 まずは、春の代表ともいえる、「菜の花」。


 英語でTenderstem broccoliと言われ、アブラナ科アブラナ属の花を指します。
 もちろん黄色以外の白色や紫色の花のものも「菜の花」と呼ばれます。
 一般的には観賞用として栽培される事が多く、春の「風物詩」として親しまれています。
 菜の花の「菜」は食用の意味があり、食料品店には蕾がついた状態でまとめた物、脇芽をまとめた物が袋詰めにして売られています。
 ほろ苦く、ビタミンタップリ。これも「春」のこの時期だけの食べ物です。
 昔は菜種油採取用の畑が多くみられました。
 原種はアジアからヨーロッパの大麦畑の中に生えていた雑草で、日本へは弥生時代に入ってきたとされています。本来は野菜として親しまれ、江戸時代には、植物油の採油目的に栽培されたものが「菜種油」と呼ばれ、主に灯油原料として使われていました。生活に密着したもので、そのため「菜種油」=「菜の花」として一般的な植物名として定着したようです。
 本来、菜種油はアブラナ科の植物の種子からであれば、どの種類からも採油可能なので、カラシナやカブなども利用されています。
 現在、油用としてセイヨウアブラナ(西洋油菜 学名:B.napus)を栽培し、在来種のアブラナは野菜として開花前に収穫します。
 観賞用が殆どで、通路沿いや川辺、畑など広範囲で開花する姿は目を引きます。早い所では2月下旬から遅いものは5月上旬くらいまで楽しめます。
 種は野菜用、観賞用として売られています。比較的育てやすく初心者向けです。
 野菜用も観賞用も10月後半に種まきをして、冬の間、多少日当たりが悪くても戸外でゆっくり育ち、気温が上がってくると次々と花蕾がつきます。
 野菜用は花蕾の部分をカットして食べます。
 観賞用は春、暖かくなるまでそのままで育ててください。
 
 次は、時々通りかかる道路脇の花壇に咲き誇るオキザリスです。


 世界中で800種類はあるといわれている植物で、日本にも5種類ほどの自生種があります。
 一年草タイプ、多年草タイプ、球根タイプや低木になる物もあるのですよ。
 オキザリスの名前は、ギリシャ語で「酸性」を意味するオクシスに由来し、葉や茎にシュウ酸を含み、すっぱい、というところに由来します。
 花茎を摘んだ指をなめてみると分かりますよ! ちなみに10円玉の黒ずみをオキザリスの葉で擦ると綺麗になります。シュウ酸によるものです。
 オキザリス・セルヌス(学名:Oxalis cernua)別名:オオキバナカタバミ。
 原産地は南アフリカ、半耐寒性の球根多年草です。
 花は3月上旬から5月いっぱい咲き、6月を過ぎると暑さで葉はなくなり休眠します。秋になると葉が伸び始めます。日当たりの良い、あまり雨などが当たらない軒下などを好みます。(できれば霜にも当りにくい場所で)
 他のオキザリスに比べると、花が大きいので存在感のある草花です。
 鉢植えやグラウンドカバーとしても使用できます。
 増やし方は球根植物なので、分球できます。株分けの間隔と同じ要領で8月下旬から10月頃に掘り上げ、球根を分けながら再度植えつけを行います。
 秋と春に化成肥料を施すと良いでしょう。
 この花の難点は、「日が当たらないと開花しない」という事です。でも葉の形や色を楽しめますよ。ご心配なく!オキザリスの種類は沢山ありますので、花の色や葉の色、形などを吟味して楽しんで見てください。(種類によって開花時期、葉の形状も異なります)

 次はゴールデンクラッカーです。


 聞きなれない名前かもしれませんが、よく知られている冬の間に開花するユリオプス・デージーの仲間なのです。
 ユリオプス・ゴールデンクラッカー
(学名:Euryops virgineus 'Golden Cracker')
 原産地は南アフリカ、キク科の常緑低木です。草丈は1m程度になり、2月下旬から5月いっぱい開花します。
 葉は松葉を細かくした物を束ねたような姿をしていて、その先端に1cmほどの黄色い花を咲かせます。
 ユリオプス・デージーほど冬の寒さに強くはありませんが、暖地であれば大丈夫。(今回は12月がとても寒かったので下葉が枯れて上がってしまいました)
 よく高さ20cm程度の小さいものが鉢物で売られていますが、1年もすれば大きくなります。
 植えるには、冬期はよく日が当り、夏期は少し木陰になる水はけの良い場所を好みます。落葉樹などの周囲がいいかもしれませんね。
 過湿は厳禁で、乾燥気味に育てましょう。手入れは背が伸びすぎるので、5月以降、花が終わったらバッサリ切ってください。
 また、肥料は控えめにして花後から真夏を除き、秋の生育期に液肥を月1回程度、もしくは株元に化成肥料を与えると良いでしょう。
 多肥になると、茎が間延びしてしまいます。(特にチッソ分が多い肥料は×です)
 暖かくなる前から小花が開花します。花の少ない時期にうってつけですね!

 今回最後は、エニシダです。


 エニシダ(学名:Cytisus scopareus)
 マメ科の低木です。原産地はヨーロッパで樹高は1.0m〜1.5m程度。開花時期は4月〜6月。
 ヨーロッパを中心に60種程度が分布し、常緑性と落葉性のものがある低木です。
 別名はエニスダ、金雀児、金雀枝と呼ばれます。
 日本には江戸時代に入ってきたとされています。香りもあり、箒状の枝の葉の付け根にチョウチョのような花をつけます。
 これから出回ってくる鉢物のエニシダは温室育ちなので寒さに弱いので要注意です。
 4月の遅霜で痛んでしまう事もありますので、暫くは室内で楽しんでください。
 本来は暖地であれば庭植えも可能です。しかしながら真夏の高温多湿は少し苦手です。植替えをするなら、花後すぐか、秋口に入って少し涼しくなってからにしましょう。
 また、マメ科の植物なので、株(根)を崩したりすると生育がわるくなります。そのまま植え付けをしてください。
 日当たり、水はけのよい場所を好み、弱アルカリ性土壌を好みます。
 株元から枝が沢山出てきます。強い剪定を嫌い、太い枝を途中から切ると枯れ込みやすくなります。枝が伸びすぎたら5月〜6月に軽く剪定しましょう。
 肥料はマメ科の植物なので、チッソ分の多い肥料を嫌います。2月下旬と秋10月上旬に化成肥料か骨粉入りの固形油かすなどを与えると良いでしょう。
 エニシダは花後に種をつけます。この種はソラマメ(殻の形)のような形をしていて、他の植物に比べると殻が激しくはじけて遠くへ飛びます。
 15mも飛んだという記録があるんですよ。
 挿し木などの栄養繁殖は難しいタイプなので、原則は実生から増やします。種を採取し、ソメイヨシノが散った頃播種します。
 先にも述べましたが、マメ科植物は移植を嫌いますので黒ポットか小さめの鉢に直接蒔いてください。20日前後で発芽してきます。
 西洋ではエニシダの枝で箒を作っていました。魔女がまたがって空を飛ぶ箒はエニシダで作られた箒だといわれています。
 本当に飛べたら楽しいですよね〜
 私は子供の頃、雨降りのあとエニシダの長い枝についた水滴を友人に飛ばして遊んでいました。今思えば何が楽しくてそのような遊びをしていたのか?不明ですが、この時期になると思い出してしまいます。
 春さかり、なぜ黄色なのか? 私にとっては心躍るようなワクワクする「色」なのです。
 
 陽射しは強くなってきますが、草花が一斉に咲き始め、木々が新芽を吹き、明るい季節がやってきます。
 新生活、新年度のスタートです。 なんかワクワク♪

御園 和穂  

(13/04/01掲載)  

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