ウメ(梅)
 一年で一番寒い季節の到来です。また、受験シーズン真っ只中!
受験生のいるご家庭ではピリピリしているのではありませんか?  随分と昔にこのような経験をしたような・・・。気分転換に咲き始めたウメを眺めてみては如何でしょう。緊張も少しは緩むのでは・・・

 今回は「ウメ」の紹介をしましょう。
 ウメ  学名:Prunus mume Sieb.et Zucc 学名はシーボルト先生が命名したようです。知りませんでした。 バラ科サクラ属の落葉高木。
     英名:Japanese apricot   別名:好文木(コウブンボク)、春告草(ハルツゲクサ)、木の花(コノハナ)、匂草(ニオイグサ)などがあります。
 中国原産で飛鳥・奈良時代の遣隋使か遣唐使が中国から持帰ったとされています。
 江戸時代以降、花見といえば「サクラ」になってしまいましたが、以前は花見といえば「ウメ」を指す事が多かったようです。  「ウメ」の語源は様々なのですが、中国語の「梅」はマイもしくはメイと呼ばれるそうですが、伝来当時の日本人は、現在の東北方言のように鼻音の前に軽く鼻音を重ねる、meをmme(ンメ)のように発音していたと記録がありました。これを表記すると「ムメ」mume→ume へと訛ったとされています。
 様々な異説がありますが、どれも定説にはいたってないようです。

 ウメの特徴は、アンズの近縁種で割りと簡単に交雑します。元々、野梅系(ヤバイケイ)の果実は小形で、果実を利用する豊後系(ブンゴケイ)などはアンズとの交配を繰り返し、大形化しました。
 ただし、完熟しても甘みを生じる事はありません。(アンズは完熟すると甘く美味しい)
 観賞しても、モモなどに比べると開花時の華やかさは劣りますが、美しくひっそりと上品な花を付けます。花色は白、または薄いピンク、赤。
葉に先立ち開花します。
 開花後、葉が生じその後2〜3cm程度のほぼ球状の実が付きます。
実の片側に浅い溝があり、6月ごろ黄色く熟します。
 余談ですが、七十二候の芒種末候には「梅子黄」とあります。
   ※七十二候(シチジュウニコウ)とは古代中国で季節を表す方法の一つ。
    二十四節季(例えば立春や啓蟄、芒種など)をさらに約5日ずつ3つに分けたもの。
    (初侯、次侯、末侯)。
    七十二候の芒種末候には「梅子黄」とは、芒種(二十四節季の一つ、小満→芒種→
    夏至に続く)の芒は「のぎ」と言い、イネ科の植物などのように突起のある植物を
    植える時期を指します。(現在ではもっと早いですが)その芒種の最後頃(末侯)に
    ウメの実が黄色く熟す(梅子黄)。という事。
 ウメには300種類以上の品種があり、野梅系、緋梅系、豊後系の3系統に分類されます。

 野梅系(野梅性、難波性、紅筆性、青軸性)
  野梅(ノウメ)から変化した原種に近いウメの事。中国から渡来したウメの
  子孫と言われている。花や葉は小ぶり。香りが良い。
八重寒紅
八重寒紅
冬至
冬至

   
緋梅系(紅梅性、緋梅性、唐梅性)
  野梅系から変化したもの。枝や幹の内部が紅色。花は紅色、緋色。
  白い花でも枝の髄が紅色のものは緋梅系で分類されている。
  葉は小さく、庭木や盆栽に使われるものが多い。
紅千鳥
紅千鳥
鴛鴦(エンオウ)
鴛鴦(エンオウ) 
鹿児島紅
鹿児島紅
豊後系(豊後性、杏性)
  ウメとアンズの雑種。
  葉は大きく、育ちの良いものが多い。
  アンズに近く花は桃色のものが多い。花は大輪で淡紅色のものが多く、
  晩咲き、花の香りは低い。
巻立山
巻立山
八重揚羽
八重揚羽
楊貴妃
楊貴妃
(植物図鑑より参照)            
 
 花を観賞する外に、やはり「実」が出来る事も楽しみの一つです。
 ウメの実を採るなら豊後系がお薦めです。
 ・豊後   淡紅色で一重と八重、実が大きく観賞用としても良い。
 ・白加賀  白花、実が大きく繊維分が少ない。(自家受粉が弱い)
 ・南高   白花、実は大きく梅干用として人気(自家受粉しない)
 ・甲州最小 白花、小梅の代表種(受粉樹としても)
 ・竜峡小梅 白花、信州小梅からの選抜。種が小さい(受粉樹としても)
などが挙げられます。
 実を採って食用にするには・・・梅干や、梅酒、梅酢、ジャムなど。また、甘露煮やのし梅などのお菓子や梅肉としても使用可能です。

 代表的な梅干は、現在のように一般家庭の食卓に並ぶようになったのは江戸時代と言われています。ある時代では「縁起物」として、ある時代では「薬用」として食べられてきました。
 薬用としては、日本最古の医学書「医心方」の中に梅干があげられ、明治時代に和歌山でコレラが発生した時に、また日清戦争時外地での伝染病にも梅干及び梅肉が効果を挙げたそうです。(殺菌作用)
 縁起物としては、鎌倉時代に武家社会のもてなしに用いられました。
「椀飯(オウバン)」と呼ばれ、クラゲや打ちアワビ(のしたアワビの事)などに、梅干や酢・塩が添えられたご馳走だったそうです。また、兵士の出陣や凱旋時も縁起の良い食物として用いられたそうです。「椀飯(オウバン)振る舞い」はこれが語源とか・・・。
 戦国時代には武士の食料袋には梅干丸(ウメボシガン)「梅干の果肉と米の粉、氷砂糖の粉末を煉ったもの」を携帯し、長い行軍の息切れを整えたり、生水を飲んだ時の殺菌等に役立ったそうです。
 
 漢方薬では燻蒸して真っ黒になった実を烏梅(ウバイ)といい、健胃、整腸、駆虫、止血、強心作用があるといわれています。
 「青ウメ」は食べると良くないという事を耳にした事があるかと思います。これは、種子の中に青酸配糖体という成分が含まれており、未熟な種子や人体の腸内細菌の酵素により、シアンという物質を作り出してしまいます。これが胃酸によって有毒性を発すると、痙攣や呼吸困難、麻痺などを起こし、死に至らしめる原因になるそうです。ただし、大量の種子を噛み砕いた場合を除いて誤って摂取しても中毒の危険は少ないようです。(医学専門書より)
 梅酒や梅干の種はアルコールや塩分、熱により酵素は失活し、毒性は低下しているそうです。
 ウメはクエン酸をはじめとする有機酸を多く含むので健康食品として多く出回っています。風邪や疲労回復などに効果があります。
また、防腐効果も高いようです。(お弁当に入れたり、おにぎりなど)

 梅干つながりで疑問に思う事も調べてみました。
「うなぎと梅干」は食べ合わせが悪い、と言う説があります。
 食べ合わせ→辞書では「一緒に食べると害になるもの」。
 医学的には、梅干は胃酸を濃くして、うなぎの油分の消化を助けるので好ましい、とか。食べ合わせの言い伝えに根拠はないようです。
 では、なぜこのように言われるようになったのでしょうか?
 ・うなぎは贅沢な食品(高価である)。梅干によって胃酸の分泌が良くなり
  食欲増進を控えさせるため。
 ・うなぎは脂っこいため、梅干で口の中がスッキリすると食べ過ぎてしまう。
 ・折角栄養をつけるためにうなぎを食べるのに、梅干の効果で栄養分が
  消化してしまう。
 ・腐ってしまったうなぎは酸っぱい。梅干も酸っぱいので傷みがわからない。
などなど諸説あります。
 が、医学的に根拠はありません。でも、現代のように食べ物が溢れ、何でも口にできる私達の生活のなかでは、食べ物に敏感で大切に考えられた昔の人の知恵は無視してはいけない一つなのかもしれません。
「梅に鶯」 「梅に鶯」
 花札の一枚です。私は祖母から「花札遊び」を教えてもらった事があります。三味線を弾き、座布団を前に花札をする、今思えば「粋なおばあちゃん」だったようです。
 残念ながら「花札遊び」は覚えてはいませんが、花札の図柄は今でも見ていると楽しいものです。
 そこで「梅に鶯」。ウメの木にウグイスがくると「絵」になりますよね。と同時に変な疑問。なぜ梅に鶯なのか?
 この件に関しても諸説があり、何が本当なのかはわかりませんでした。
 諸説では、「ウグイスではなくメジロが本当である」とか「メジロは集団で行動をするが、ウグイスは単独行動である」、「ウグイスは藪の側で小さい虫を食べるがウメの蜜は吸わない」などなど。
 ウグイスの羽もメジロの羽も同じような「薄い緑と茶を掛け合わせような色」をしていると私は思いますが、一般的にはこの色を「ウグイス色」と呼びます。
「ウメにメジロ」 この写真は「ウメにメジロ」です。
 これがウグイスであっても見分けが付かないのが現状かもしれません。
 あえて、鳥の目の周りが「白い」からメジロだと判断する方はいると思いますが、私はウグイス色だからウグイスだと思っていました。
 調べると、実際に「梅に鶯」を目にする事はないようです。
 ある記事に、『たとえ話は、実話でなくても実際に目にする事が少なくても良いことなのでしょう。本来、たとえ話は「その事を目にするかしないかは関係ない」事なのだ』と。その通り。
 個人的には、その姿がメジロであっても言葉の響きからすると、ウグイスの方がピッタリなように思えるのですが・・・
 冒頭に書いたように、受験シーズン真っ只中です。最後の追い込み、夜遅くまで勉強をして夜食を食べて・・・寝不足はもちろん、お腹の調子は悪くありませんか?
 ご飯に梅干でも食べて、消化を促し、スッキリしたお腹で受験を乗り越えて下さい。そうでない方も、寒い季節は動きが悪くなりがち。じっとしていて運動もしないようであれば体調も今一つなのでは。 たまには粗食にして「梅干」、体には良いと思いますよ。
大宰府天満宮の「本殿と飛び梅」  大宰府天満宮の「本殿と飛び梅」です。
ご利益があるといいのですが・・・。

御園 和穂

(10/02/01掲載)

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