アサガオ
 梅雨の季節です。日本列島は南北に細長いので、九州から本州まで約一か月かけて梅雨が北上します。
 最近の梅雨は、「豪雨のような」感じですが、本来は絹糸のような雨がシトシト降り、降ったかと思えば晴れたりを繰り返します。
 湿度は高く、ジメジメして決して心地よい時期ではありませんが、動植物にとっては繁殖の適期。ホタルが飛び始め、梅の実が黄色くなり始める頃です。

 今回は、小学校低学年の頃、理科の時間に栽培をしたのが最後かもしれない・・・アサガオを紹介しましょう。

 アサガオ 学名:ipomoea nil(pharbitis nil)。
 ヒルガオ科サツマイモ属のツル性一年性植物。
 和名:アサガオ(朝顔)。英名:japanese morning-glory。
 原産地:熱帯アメリカ、熱帯アジア。
 日本への渡来は平安時代末期に遣唐使が種子を薬として持ち帰った事が始めとされています。
 アサガオは、世界的には形態が多彩に変化した園芸植物と言われ、日本で最も発達した園芸植物と言われています。(特に江戸時代に入ってから)
 形態の変化とは、種の付き方が悪かったり、出来にくい物など、現在であれば遺伝子操作によって多くの品種を作る事が出来ますが、当初は操作の方法がなかったため、たくさんの種を蒔き、その中から良い物や変わった物を選びだしていたようです。感覚的に「メンデルの法則」を実践していたようですね。
 現在でも変異遺伝子を多く持つアサガオは、遺伝学の研究材料になっているそうです。
 
 アサガオ栽培は、いまでも小学校低学年の夏休み課題のようですが、意外にも奥の深い植物なのです。
 栽培キットは、種は厳選され、発芽促進処理も施され、土や肥料も加えられており、種を蒔いて水だけ与えておけば発芽できるようになっています。
 小学生なので、「失敗は許されない」というよりは「みんな一緒に発芽」でないといけないのでしょう。
水やりをきちんと行えば、まず発芽しない事はないようです。
 確かに「アサガオ」の種まきは決して難しくありませんが、そのままばら撒いてもなかなか芽は出てきません。この説明は後ほど。

 江戸時代に入って、「薬のための種」は突然変異で美しい花を咲かせ、当時の人を魅了し、「変化アサガオ」や「大輪アサガオ」などがブームを起こしました。
 数多くのアサガオを自然交配し、伸びてくる葉や咲き始めた花の姿に変化が起こることを期待してつくりだしていました。
 変化は獅子咲き、牡丹咲き、桔梗咲きなどの花の形を特徴としたものや、葉の形状が細長い物や丸葉、茎は通常つるタイプですが、直立タイプや垂れ下がるタイプもあったようです。(写真:植物図鑑等参照)
獅子咲き 撫子牡丹咲き 桔梗咲き
 「変化アサガオ」の咲き方は、獅子咲きは、切れ込みが入り細長い糸状の花弁の先が風鈴のように折り返してくるもの。撫子牡丹咲きは、撫子のように花弁の先に切れ込みが入り、雄蕊・雌蕊が花弁に変化したもの。
両者は葉も細長いのが特徴のようです。
 桔梗咲きは、桔梗の花と同じ色合いで雌蕊が花弁化しているので花弁内がダブルの花にも見え、花弁の縁に白が入るのも特徴の一つです。
 「大輪アサガオ」は文字通り、花の大きさを競っていたようです。
 アサガオは花弁の事を「曜」と呼び、花弁がお互いに融合し漏斗状の形をしています。
 曜は5枚が基本のようですが、大輪アサガオが発達するにあたり、曜が6〜9枚程度に増えた新種も生まれたようです。
 現在の代表的な大輪系(曜白大輪:富士)は、曜と呼ばれる部分と縁が白く、コントラストが美しい星型のアサガオです。
 花の大きさは直径13cm〜15cmくらい。子供の手のひらくらいの見事な花を咲かせます。
 以前にもご紹介した「肥後六花」の中にもアサガオがあります。こちらは「変化アサガオ」ではなく、あくまでも「大輪」にこだわった品種の作出だったようです。曜が6〜9枚に増えた変異は「州浜系統」と言われ、現在でも熊本で保存されている種類の一つです。
 江戸時代から続く下町の風物詩として「入谷の朝顔市」は有名ですね。
 残念ながら行った事はないのですが・・・、変化アサガオや大輪のアサガオ、変わり咲きアサガオ、行灯仕立てのアサガオと多種多様のアサガオを見る事も出来るし購入もできるそうです。
 今年も7月の6、7、8日の3日間行われます。
 また、愛好家が自慢のアサガオを持ち寄り、各所で展示会も開催されているようです。季節の花、機会があれば覘いてみたいですね。

 《アサガオの育て方》  
 普通に種を蒔いて発芽、ツルを伸ばしある程度の大きさになったら開花します。当たり前ですが、今年は一手間加えて育ててみましょう。
 種を蒔くか、苗から育てるかによって異なりますが、まずは「種まき」から説明しましょう。(種からでも育てやすいので挑戦してみて!)
 
 種まきの時期は、20〜25℃と比較的高い気温が必要です。気温の低い時期に種を蒔いても発芽しないので要注意。
 早くて5月の中旬以降になります。
 アサガオの種は表皮がとても固く、芽をだしても殻が破れないために双葉が開けず枯れてしまうこともあります。そのため発芽の手助けをする「芽切り」を行います。種が十分に水分を吸えるようになり芽が出やすくなります。
 お臍(ヘソ)のように窪んでいる部分が「発芽」する場所です。反対側の丸くなっている部分をヤスリなどで傷をつけ、一晩吸水させてから蒔きます。
 これが「芽切り」という方法です。
 今回種を数種類購入してみましたが、全ての袋の裏に、「水にはつけないよう」「発芽促進処理済み、水つけ、傷つけ不要」と記載されていました。
 処理といっても、薬によっての処理ではありませんので、安心して使用してくださいね。
 種は「じか蒔き」(直接花壇やプランターへ種を入れる方法)でも「ポット蒔き」(黒いビニールポットに播種し苗にし、移植する方法)、どちらの方法を選んでも大丈夫です。 種まきの深さ1cm程度です。
 種を蒔いて一週間から10日くらいで発芽してきます。
 双葉の様子です。さらに一週間から10日後には本葉が出てきて、どんどん成長してきます。
 苗を購入する場合は、本葉が出始めた頃のしっかりした苗を選んでください。
 鉢で「あんどん仕立てに」する場合。
 用意する資材は、直径18〜20cm程の鉢と使用する用土は水はけの良い、腐葉土などがはいった土を用意します。草花用の培養土で十分です。
 あとは、あんどん仕立てなので、棒とワッカが一体になった支柱材を用意します。
 鉢に土を入れ、苗を植付け、支柱も取り付けましょう。  双葉の次から出てくる葉を本葉といいます。この本葉が8〜10枚伸びてきたら最初の作業として摘芯という作業を行います。
 一番下から5枚目の本葉の上で茎を切ります。先端を切られた事から残った葉の脇から新しい「つる」を伸ばし始めます。
 つるが沢山出てしまった場合は、下の葉3枚目までのつるは取り除きます。
 残したつるが15cm程度まで伸びてきたら、一番元気のよさそうなつるを選び、他のつるは葉の脇部分から取り除きます。
(全てのつるを残しても大丈夫ですよ!)  1本になったつるは支柱に絡ませていきます。アサガオのつるは基本「左巻き」に巻きつきます。
 その後は良く日に当てて、水は鉢の表面が白っぽくなってきたらタップリ与えます。(鉢の底から流れ出るくらい)真夏の水やりは朝晩の涼しい時間帯に行ってくださいね。どうしても日中に与えなければならない場合は、鉢を日陰に移してからタップリ与えてください。
 肥料は、苗を植付ける時にゆっくり効果が出る緩効性の化成肥料を混ぜておきます。追肥で化成肥料を鉢の表面に置いておきます。液体肥料でも構いません。 
 「緑のカーテン」にするなら、少し大きめのプランター、ネット等用意します。
 用意するアサガオは、あんどん仕立て用に用意した種類でも構いませんが、より長く(つるも開花時期も)生育させるなら、西洋アサガオ(ヘブンリーブルー)をお勧めします。  種のまき方は普通のアサガオと同じです。
 異なる事は、あんどん仕立てのように小さくは育てないので、本葉の摘芯は高さが1mくらいまで伸びた時点で先端を切ります。
 その後は横のつるも伸ばしながら、ネットにまんべんなく這わせてください。
 開花時期が少し遅くて、「いつまでも開花しない?」のではなく、時期が来てないだけなのでご心配なく。
 晩夏から霜が降りるくらいまで開花します。
 肥料は化成肥料を与えます。ただし、施肥は夏の終わりくらいまでとし、それ以降は与えません。(遅くまで肥料を与えていると葉だけが茂ってしまうため)
 ブルーが主流ですが、最近は濃いピンクもあります。二色を混ぜて植えつけても華やかで素敵な緑のカーテンになりそうですね。
 取り扱いは一年草扱いです。枯れてきたら終わりです。
 忘れてました〜 アサガオは短日植物なので、日中の日差しは問題ありませんが、外灯の下やいつまでも灯りがついているベランダなどで育てると花が咲かなくなります。置き場所は考えてくださいね。

 「アサガオの魅力」、充分にお伝え出来たでしょうか?
 アサガオの展示会(展覧会)があれば是非覘いてみたいものです。
 合わせて今年は、少し変わったアサガオの種を探して育ててみようと思います。
 江戸時代まで気持ちはさかのぼれませんが、「花」の不思議を楽しんでみたいと思います。

御園 和穂  
(14/06/01掲載)  

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