観葉植物-1
 6月、梅雨入りしましたが北九州は雨が少なく暑い日が続きました。7月、梅雨も終盤に入ってくると昨年のような豪雨にみまわれるのでしょうか。
 この季節の雨は植物の生長を促します。湿度も高くなるので、管理をする際には切戻しを行い風通しよくしておきましょう。

 今回は、様々な葉の形や色で室内を中心に家庭やオフィスなどで私たちを楽しませてくれる観葉植物を紹介します。観葉植物を一括りにするには範囲が広く、特別な定義があるわけではありませんが、しいて言えば『室内で育てる事ができ、花が咲かなくても見て楽しめる植物』です。
 普段目にしている観葉植物も「知ると」見方が変わるかもしれませんね!
 まずは、観葉植物の歴史を知りましょう。
 歴史はとても古く、古代ギリシャには存在していました。
 その昔、一年中緑を保てる植物や樹木は「繁栄や長寿」のシンボルとされていました。
よく見かけるアカンサス・モリス
 古代ギリシャでは「アカンサスの葉」の美しさに魅せられ、植物としての栽培をはじめ、建築様式の柱のデザインモチーフとしても使われる程。
 皆さんもよく知っているギリシャ建築における、コリント様式の特徴です。
 (写真:植物図鑑等参照)
 アカンサスの葉模様は現代でもモチーフとして使われています。
アカンサス・モリスの葉 柱のデザイン ウィリアム・モリスのデザイン
(ちなみに日産シーマのエンブレム、これもアカンサスの葉だそうです。私はずっとホタテ貝だと思っていました・・・)
 それ以外も、シイ、クス、カシ、サカキなど温帯地域の照葉樹は、常緑で美しい葉であることから古くから観賞されてきました。

吊シノブ(写真集より参照)
 日本においては、照葉樹のサカキは神の依り代として親しまれ、江戸時代にはカエデやオモト、マンリョウなど葉の美しい植物を鑑賞し、盛んに栽培がおこなわれるようになりました。(古典園芸植物と言われている植物です)
 一般家庭では、吊シノブを軒下にぶらさげ、緑を楽しむのと合わせて涼も楽しんでいたようです。
 ハボタンは江戸時代にキャベツが導入された際に、鑑賞用として改良された観葉植物ですが、花壇用の一年草として扱われています。(古典園芸植物の一つです)
 ヨーロッパでは、大航海時代以降(15世紀〜)、世界各国から様々な植物が集められ、温室の発達とともに栽培も幅広く行われるようになりました。
 19世紀に入ると産業革命によって鉄鋼材、ガラスの生産も多くなり、温室が普及、さらにガラスの品質向上にあわせて室内でも長い時間植物を管理できるようになり、温帯の植物だけでなく亜熱帯、熱帯の植物、高山植物等、葉の美しい植物の栽培も可能になりました。
 日本の場合は江戸時代から栽培は行われていましたが、「観葉植物」として一般的に親しまれるようになったのは、昭和30年以降の高度成長期に入ってからと言われています。住宅が一軒家からマンションや集合住宅に変わり、区画整理された街なみや高層ビルが立ち並び道路が整備され始めた頃です。
 山を切り開き、樹木を切り倒し、生活は豊かになりましたが自然豊かな緑は少なくなってしました。そこで、室内で楽しめる緑として脚光を浴びたのが観葉植物だと言われています。
 葉や姿は美しく、鉢物でコンパクト、容易に育てられるという事から大ヒット商品に・・・なったかどうか?は、わかりませんが一般的に親しまれる植物になりました。現在では病院や商業施設、ショッピングモール等のあちらこちらで観葉植物を楽しめるようになりました。
 観葉植物の歴史は長かったですね〜。
 先日、観葉植物を頂きました。贈答用としても一般的ですが、育てられるかどうかは別物です。せっかくの頂きものですが・・・
 グズマニア・マグニフィカ
 学名:Guzmania × magnifica 原産地:熱帯アメリカ(園芸種) 科名:パイナップル科
 常緑の多年草。 
 マグニフィカは2種類のグズマニアのかけ合わせから作られました。小型から中型タイプまであり、生育旺盛で花付きもよく、鉢植えでよく見かけます。中南米の熱帯雨林には120種を超えるアナナス類が生息し、基本は熱帯樹の上の方に着生する植物です。

 葉を大きく広げ、茎は短く、葉の中央部は重なり合った構造になっており、水が溜まるようになっています。
 グズマニアは水や栄養を葉から吸収できる構造になっていて、溜まった水は吸収されます。
 熱帯雨林の中でもたくましく生きていく事ができるように進化したのでしょう。
 株の中央から茎が伸び、穂状の花を付けます。花茎についている花は短命ですが、葉が鮮やかな朱赤色や黄色に色づき約2〜3ヶ月程楽しめます。
 鑑賞期間が過ぎると、放射状に広がった緑の葉のみになりますが、品種によっては葉に白色や桃色の筋が入るタイプもあります。
 育て方において、まず置き場所が重要です。年間を通して半日陰の場所が適地です。直射日光に当たると葉先から茶色く枯れてきます。(カーテン越しからさらに中へ入った所)
 高温を好み、生育適温は20℃〜30℃程度です。寒さに弱いですが、室内で乾燥気味にしておけば十分に越冬します。
 水やりは、成長期(5月〜9月一杯)は株の中央の筒になっている部分に溜めるようにします。また、鉢の表面が乾いてきたら、株元と葉全体にタップリ水をかけます。冬場は筒の中に水は溜めないようにし、鉢の中(用土)も乾かし気味に育てます。
 肥料は成長期のみ与え、緩効性肥料を置肥として与えるか、液体肥料を与えます。(液体肥料は筒の中に入っても大丈夫です)
 植替えの適期は5〜6月です。今回花を付けた株は二度と花を咲かせないので、親株の脇に子株が出来るまで育てます。子株が15cm程度まで育った時点で親株から切り離し、水ゴケで巻いて小さな鉢に植え替えます。
 あまり小さいとその後の生育が遅れますので要注意!
 その後開花するまでには1年以上は要しますので気長に育てましょう。
 
 その昔、「幸福の木」(ドラセナ・マッサンゲアナ)や「金のなる木」(クラッスラ・オバタ)などが一般的で「お祝い事」には引っ張りだこでした。
 最近は「贈る品物」ではなく「グリーンインテリア」として自分の部屋に似合う植物を選ぶようになりました。
 「ちょっとモダンでおしゃれ」な存在感のある観葉植物が好まれています。
 クワズイモ 学名:Alocasia odora
 科名:サトイモ科 原産地:熱帯アジアから温帯アジア 常緑の多年草。
 クワズイモは成長がとても早いので「出世芋」の別名があり、「開店祝い」「事務所開き」などのお祝い用ギフトとして人気があります。
 名前の由来はサトイモに似ていますが食べられないので「食わず芋=クワズイモ」、といわれるようになりました。
 根には毒があり、食べると中毒を起こしてしまいます。誤って食べてしまったり、切り口から出る樹液が口に入ったりすると舌がしびれて話が出来なくなるような症状もでるそうです。
 毒は水で晒しても抜けないので、害虫がつきにくいともいわれます。
 また、葉が大きいことが特徴ですが、水を与えると「葉から水がたれる」程蒸散作用が活発です。室内の場合、床が濡れる心配もしないといけませんが、「加湿器」の代わり?になるかもしれませんね。
 置き場所は明るい日陰。5月から9月いっぱいは直接日の当たらないベランダでも大丈夫です。それ以外の季節は明るいカーテン越しが居心地の良い場所でしょう。
 冬場の最低温度は5℃前後。観葉植物の中では比較的低い温度で生育できます。
 あまり暗い場所に置くと、葉が黄色くなったり、エアコンの風が直接当たると枯れてしまいます。
クワズイモの花
クワズイモの花
 成長が早く、育てやすいタイプです。
 水やりは、鉢の用土の表面が白っぽく乾いてきたらタップリ与えてください。
 受け皿には水を溜めないでくださいね。加湿状態にしておくと腐りやすくなります。
 真夏の間は外へ出して、葉にも水をかけてあげるとホコリも取れてすっきり。冬場は乾燥しやすいので葉水をかけてください。
 肥料は生育期の5月から9月の間に、緩効性の化成肥料を与えます。(置肥です)
 冬場、茎が伸びてしまったり、葉が黄色くなってしまっても、本体が枯れてなければ春から再生可能です。
 茎が伸びて折れてしまった場合は(葉の重みで)、茎を輪切りにして、切り口を2〜3日ほど放置し乾燥させてから、土に挿します。茎挿しといいます。約1ヶ月日陰で育てて芽が出てくれば成功です。
 子株が出来れば、株分けをして育てます。もしも花が咲けば(室内では難しいです)、種が出来るので播種してもいいですね。
 クワズイモは環境が合えば、葉を茂らせて大きく育ちます。上部が重くなってくるので鉢が倒れることがありますので注意してくださいね。

 周年を通して、身の回りにある植物が観葉植物です。今からの季節、入手して育てるには良い時期です。花壇やコンテナでの草花はちょっと・・・・という方でもチャレンジ出来そうですよ!
 次回も観葉植物、「ちょっとモダンでおしゃれ」なタイプをご紹介します。

 〜観葉植物を育てているあなたへ〜
雨が降ってきたら、いっせいに鉢を外へ出して雨にあててみませんか?
ほどよい湿度が大好き。もしも傷みがあれば回復してくると思いますよ♪
《ただし、風が強い時は鉢が倒れないよう注意してくださいね。》

御園 和穂  
(14/07/01掲載)  

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