右手の中指には、ペンだこがあって、小学校に上がる時分にはもう膨らんでいた。「勉強家ねえ。」と友達のお母さんは感心していたが、勉強などでできるわけがなかった。これは「鉄腕アトム」と「鉄人28号」で出来上がったものだ。新聞のチラシやカレンダーの裏が僕のキャンバスだった。毎日手が真っ黒になるまで絵を描いた。だからペンだこは私の小さな歴史でもある。
高校では美術部に属して、絵ばっかり描いていたが、その後長らく絵筆をとることはなかった。3年くらい前から、水野さんと大神さんに勧められて、絵を描くことを再開した。巧拙はともかく、無心になって取り組めるものがあるのはいい。これも趣味の気楽さか、とはいうもののそれなりにウンウン唸って描いている。それがまたいい。「拙くても心をこめる」という美風は、最近とみに失われてきているようだ。みんな小奇麗になって、効率ばかり気にして、計算ばかりしている人が増えたのは、悲しい。
私は母ちゃんや子供の寝静まった深夜、イーゼル(画架)をひろげてシコシコと絵を描いている。好んで描くのは老人や子供や犬などが多い。(老人を描くことが多いのでひそかに「じい専(G線)上のアリア」と呼んでいる。)ただ、私は私なりに、ユーモアとペーソスがあって、その人物の小さな歴史が感じられるもの、そんな絵を描いていけたらなと思っている。
今回、お二人に加えて頂いて、この展覧会に展示させてもらえることを光栄に思う。「新緑につつまれて」とあるように初夏の美しい風景や花が描けたらどんなにいいだろう、と思うのだがどうもうまくゆかなかった。これを契機に、もっともっと精進をしていけたらな、と思う。
最後となりましたが、もしお時間があり、お心を寄せて下さるようでしたら、下記「三人展」に、足を運んで頂きご講評を頂ければ幸いです。
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記 |
「三人展」〜新緑につつまれて〜
場所:白野江植物公園
門司区白野江2丁目 Tel 093−341−8111
日時:5月10日(月)〜5月30日(日) 09:00〜17:00
ただし、火曜日は休園日です。
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上田 達也 <北九州東部緑地管理 株式会社>
(10/05/08掲載)
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