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花のコーナー

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花のコーナー

御園 和穂##

2021年05月 八十八夜と端午の節句

 5月、穏やかな気候で新緑が一番美しい時期です。
 年明けから例年にない寒さに遭遇し、その後3月に入ると気温の高い日が続き、サクラは例年より早く開花しました。
 4月中旬の天気予報で、『3月の平均気温が100年ぶりに高く、サクラの開花がすすみました。北日本のサクラの開花も早めです。合わせて朝晩の寒暖の差が激しく、全国的に遅霜警報が出ています』とのコメントを耳にしました。
 特に農家や家庭菜園を楽しまれる方には、寒暖差が作物に影響を及ぼし、苗の植付けや種まきに大きな影響を与えてしまいます。
 ~夏も近づく八十八夜~ の唱歌は皆さんもご存じだと思います。八十八夜は雑節の一つで、立春から数えて88日目にあたる日を言います。
 今年の八十八夜は5月1日です。その4日後には「立夏」を迎えます。
 この頃には農作業が本格化し、「八十八夜の別れ霜」と言われ、この日から霜の害に合わないとされています。

 今回は「八十八夜」に歌われる茶摘みに合わせて、「茶」から紹介します。


チャノキ

2021

学名:Camellia sinensis
ツバキ科 ツバキ属 常緑低木
原産地:中国南西部、インド、ベトナム
別名:チャ  漢名:茶
英名:Tea tree
開花時期:10月~11月

 チャノキは古くから人里で栽培されており、「お茶」の原料となっています。
 5月、チャノキの新芽を摘む「茶摘み」の最盛期に入ります。
 昔から八十八夜に摘まれたお茶は柔らかくて質が良く、まずは神仏にお供えをし、目上の方に振舞われるものとされていました。
 八十八の八は末広がりで文字が重なることから縁起が良いとされ、この日に摘まれたお茶を飲むと長生きするとも言われています。
 また、文字を組み合わせると「米」になり、農作業を始める良い時期とされ、地域によっては米寿のお祝いをするそうです。
 チャノキは常緑の低木類です。

2021

 私たちが目にするチャノキは茶畑の高さ1m程度に刈り込まれた姿を思い浮かべますが、本来は放置すると2~3mの樹木になります。
 花は秋。華やかではありませんが、枝先に下向きの白いツバキに似た花をつけます。その後に種を付けて翌春には種が弾けます。
 用途としては、茶花として飾られ、花は煮詰めて佃煮にして食したり、蒸して花茶として飲んだりとか。花のてんぷらは絶品なのだそうですよ。機会があれば是非食べてみたいですね~
 しかし、茶畑のチャノキには花を付けさせません。花や実をつけるということは、樹にとってエネルギーを使うことになります。
 お茶栽培としては良質な葉を育てるため花芽はすぐに摘みとってしまいます。
 ちなみに日本でお茶として生産されているチャノキは種子からではなく、すべて挿し木で増やされています。こうすることで一定の品質が保たれています。

 チャノキが日本に導入されたのは奈良、平安時代です。最澄、空海らが中国からチャノキの種を持ち帰ったものが最初と言われています。当初は薬として入ってきたようです。
 広く栽培されるようになったのは、鎌倉時代初期に栄西が持ち帰った種子からと言われ、京都栂尾(トガノオ)に蒔かれたチャノキが宇治茶の起源と言われています。

 歴史を調べていて知ったことがあります。
 『「お茶を飲む」こと、一般庶民が口にするようになったのは江戸時代に入ってからで、それまでは僧侶や貴族階級だけの嗜好品でした。鎌倉時代に寺院を中心にお茶をたしなむ「喫茶」が広がり、その後武士階級にも喫茶が浸透しました。};
&deco(blue){ 室町から安土桃山時代に入り、千利休らによって「茶の湯」が完成、豪商や武士たちに浸透し、江戸幕府の儀礼に茶の湯が取り入れられ、武家社会では欠かせないものとなり、その後一般庶民にも普及しました。
 一般庶民のお茶は抹茶ではなく茶葉を煎じたものだったようです。
 その後さまざまな製茶方法が編み出され、18世紀後半には日本全国にお茶が広まります。近世になると流通機構が発達し、生産、生産問屋など取引が活発に行われるようになり、長崎、横浜、函館などの開港を機に生糸と並び重要な産物として輸出されます。
 明治以降、茶園の開拓や茶葉の製造に変化が生じ、士族の茶園が農民に継承され、茶葉揉みも機械化されていきます。
 明治中期までは順調であった輸出も、インド、セイロン紅茶に押され、お茶は国内向けの嗜好品に変わっていきます。お茶が日本人の生活に根付いたのは大正末期から昭和初期と言われています。(伊藤園のお茶百科より)

 お茶を飲むという習慣は「古くから当たり前」だと思っていましたが、意外にも新しいことであったことに驚かされました。
 チャノキはサザンカの仲間です。一般の庭木としても楽しめます。

【育て方】

  • 植付け(地植え)
    日当たりのよい場所を選びましょう。根鉢より一回り大きな穴を掘り、掘り上げた土に堆肥を加え撹拌し、その土で埋め戻します。そうすると、その後の肥料を与えなくてもよく育ちます。
    ※根を深く張る性質があるので移植が困難になります。植える場所を見定めてから植付けましょう。
  • 水やり、肥料
    • 水やり
      地植えなので、降雨のみで十分育ちます。
    • 肥料
      植付け時に堆肥を十分に与えておけば、1年は必要ありません。
      その後は2月~3月、9月に株廻りに与えます。
  • 剪定
    全体のバランスを見ながら、4~6月に飛び出した枝を切る程度です。
    込み合ってくるようならば、風通しを意識して枝抜きを行いましょう。
  • 増やし方

    • 種でも増やせますが、大きくなるまでにかなりの月日を要します。
      11月ごろに熟した実を種として植えます。
    • 挿し木
      適期は6~7月です。その年に伸びた若い枝を15cm程切り、赤玉土などに
      挿します。
      置き場所は直射日光の当たらない明るい日陰です。
      乾かさないよう水を与えたらビニール袋などで覆って管理します。
      新芽が伸びてきて根が出てきたら植付けします。
  • 病害虫
    • 害虫
      ツバキ類、サザンカ類には「チャドクガ」が発生しやすいですが、チャノキは比較的発生しにくい方です。
    • 病気
      根に発生する白紋羽病に注意が必要です。
      白紋羽は根の周囲に白い菌が発生し、次第に生育が悪くなり枯れていく病気です。発生した株は回復しないので、残念ながら土ごと処分して他の植物への感染を防ぎます。

 
 庭木の1本として、生垣でも楽しめます。新芽が出るころに芽を摘み取り、お茶にして楽しむこともできますね。
 ちなみにお茶(緑茶、紅茶、烏龍茶など)は全てチャノキ(Camellia sinensis)の葉から茶葉が作られます。
 焙煎の方法で様々なお茶が作れます。お試しあれ!

 チャノキは、比較的簡単に育ちますが、お茶にする過程は、それはそれは手間暇がかかる作業です。
 現在のお茶つくりは、明治当初の機械化とは比べ物にならないほど進化をしていますが、それでも品質の管理やチャノキの育て方などきちんとした工程を経て、安定した良質のお茶をつくることができます。
 何気ない嗜好飲料ではありますが、奥の深いチャノキでした。



 次は、カシワ(柏餅とチマキ)を紹介します。
 八十八夜が過ぎると大型連休に突入です。

2021

 その中の祝日に「こどもの日」があり、「端午の節句」と呼ばれます。
 「端午」とは「月初めの午の日」という意味で、本来は5月に限ったものではありませんでしたが、古代中国では旧暦五月が「物忌みの月」とされ、中でも五日は「五が重なる」ことから邪気を払う行事が行われていたそうです。
 一方、日本では田植え前の時期で、早乙女たちが菖蒲やヨモギで葺いた屋根の下で身を清め、厄を払うという女性ならではの行事がありました。
 この両方の行事が結びつき、五月五日には菖蒲湯に入り「厄除け」の風習が生まれたと言われています。

2021

 男の子の祭りに変わったのは、江戸時代からと言われ、厄を払う「菖蒲」が「尚武(武事を尊ぶ)」や「勝負」に通ずることから勇者の象徴として変化したようです。
 現在でも男の子がいる家では、立身出世を願い「鯉のぼり」や「武者飾り」を飾る風習が継承されているのですね。
 その時に「柏餅やちまき」を供えます。

 なぜ「柏餅」なのでしょうか?餅を包んでいるカシワの葉から、カシワを紹介しましょう。

カシワ

2021

学名:Quercus dentata
ブナ科コナラ属 落葉中高木
原産地:日本、朝鮮半島、台湾、中国に分布する。
漢字名:柏、槲、檞
英名:Japanese Emperor Oak Kashiwa Oak、Daimyo Oak

 痩せた土地でもよく育ち、火山地帯や海岸などに群落が多くみられます。

2021

 昔から葉が大きく、食べ物を包むものに使われていました。
 大きな葉は南国の樹木のイメージがありますが、比較的寒冷地に多分布しています。
 海岸沿いの防風林は松が主流ですが、北海道の道北や道東など松が育たない地域では、カラマツやカシワが防風林として植えられています。

 カシワは落葉樹です。本来落葉樹は秋に葉が枯れて落ちますが、カシワは翌年の春に新芽が出るまで葉が落ちることがありません。「葉守り神」が宿る縁起の良い樹木と言われます。
葉が落ちないので、冬季の強風を防ぐ役目をしているのです。
 もちろんカシワに限らず、その他にアベマキやヤマコウバシも同様に新芽が出るまで葉を落としません。ユズリハも「葉を譲る木」として知られていますね。
 

2021

 カシワの由来は先に記したように、新芽が出るまで古い葉を落とさないことから「子孫繁栄=家系が途切れないように」という願いが込められています。
 端午の節句に供えられる「柏餅」は、カシワの葉のげんを担ぎ、子供たちの健康や跡継ぎが絶えないようと願うお菓子だったのですね。
 また、見た目でも餅を包んでいる姿が拍手を打っている様子に似ていて、武家社会で子供の武運を祈願したとも言われています。

 余談ですが、柏手(カシワデ)を打つのは、カシワには神が宿る木だと考えられてきたからなのだそうです。
 柏餅が緑色のものは「ヨモギを混ぜた餅」です。ヨモギも邪気を払うと信じられた植物なのですよ。
 チマキ(粽)も一緒に供えるところもあります。

2021

 元々は中国で供え物としていた行事が日本に伝来し、奈良時代に端午の節句の風習になりました。
 それは二千年以上も昔、中国の楚の国の詩人が国を憂いながら河に身を投げて亡くなり、その日が5月5日だったので、楚の国の人々が彼をしのび、毎年この日に竹筒に米を入れて河に投げ込み供養をしたという故事に由来しています。

 当初はレンジュ(楝樹)の葉にもち米を包んでいたそうですが、時代が移り変わり、現在は笹の葉や茅の葉が使われるようになりました。

レンジュ

2021

学名:Melia azedarach L.
センダン科センダン属 落葉高木

 レンジュ(楝樹)とは、薬用植物のセンダンのことのようです。
 街路樹や庭木、公園樹として植えられ、花後の果実は生薬(苦楝子:クレンシ・川楝子:センレンシ)としてあかぎれやしもやけの外用として使われ、煎じて内服薬として使用されることもあります。また、葉は強い防虫効果を持っています。

 現在では、チマキのほとんどが「笹の葉」に包まれているように思います。笹の葉にも抗菌・制菌作用がありますよ。
 チマキは、中国の風習として伝来したものですが、日本では馴染みが薄かったので、地域によって姿が変わっているように思います。 
 私が知っている姿は、細長い筒の形で、白い餅が入っているものです(上記の写真参照)。東日本では三角形の中華チマキのようです。
 どれが正しいのかは~わかりませんが、柏餅もチマキも、端午の節句には欠かせない食べ物ですね。

画像の説明

 新年度早々慌ただしい一か月が過ぎ、コロナ禍での自粛生活もまだまだ続きそうですね。
 心地よい季節の到来です。遠出はしたいけど~人込みは控えたいし・・・。
 今しばらくは、新緑を楽しむのに庭木を愛でたり、ゆっくりと公園を散策するのもお勧めです。

2021

 「子供の日」には、薬草として使われる菖蒲を準備して、菖蒲酒を飲んだり菖蒲湯に入ったりしてみませんか。
 昔から、菖蒲は厄除けとして軒先に飾られたり、枕の下に敷いて「病気や厄災を祓う」と言われています。
 その後、八十八夜で摘んだ新茶を飲みながら柏餅やチマキを食べれば~
「怖いものなし!」かもしれませんね。

 昔から伝えられている風習ですが、私も細かい内容までは記憶が薄れてしまっていました。素敵な風習には意味があり、子供たちに伝えていけるといいですね。
 これから夏の到来です。
 今しばらくは自粛をしながら、暑さに負けないで頑張っていきましょうね!

(2021/05/01掲載) 

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