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花のコーナー

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御園 和穂##

2018年11月 似て非なる植物?

 11月初頭の「立冬」を境に「冬」の季節になります。
 9月から10月にかけて大型台風に見舞われ、合わせて太平洋高気圧の勢力が強かったため、いつまでも蒸し暑く気温の高い日が続きました。
 中旬に入ると秋らしい雰囲気になりましたが、急に気温が下がったせいか、極端に寒く感じているのは私だけでしょうか?
 毎年、9月下旬にはパンジーやビオラを見かけていましたが、今年は10月に入ってからでした。最初は弱々しい苗でしたが、これからはしっかりした苗が出てきますよ。
花壇やコンテナの植え替え準備を始めましょう。
 これまでは、作業は「暑さに気を付けて!」が合言葉でしたが、これからは、「暖かい日を選んで!」に替わりますね。
 なんか笑っちゃいます~~~月日が経つのは早いですね。
 私も植え替え準備を開始です。
~「来春に向けてどんな感じにしようかな?」~

 今回は、「よく似ている花や姿形」「容姿は似ていないけど実の形が似ている」などの一部を見ると見間違ってしまうような植物を紹介します。
 まずは、「シキミとトウシキミ」です。

シキミ

画像の説明

学名:Illicium anisatum 
シキミ科シキミ属 常緑小高木
原産地:中国、日本(自生はしていない)
別名:ハナノキ、ハナシバ、コウノキ
漢字表記:樒
樹高:2m~5m程度(地域によっては10m程)
開花時期:3月~4月

 関東以西で四国や九州、沖縄などの比較的暖かい山地に見られる広葉常緑樹です。

画像の説明

 3月~4月にクリーム色の花を咲かせます。
 葉は深い緑色で革のような質感、光沢があり、葉全体が軽く波を打ったような形をしています。
 「樒(シキミ)の花」は晩春の季語でもあります。
 秋には熟した果実が見られます。

画像の説明

 樹木として寺院などに植えられている場合は、定期的に管理されていることが多く果実を確認するのは難しいかもしれません。
 実は不思議な形をしています(写真:真ん中参照)。
 緑の果皮の中のオレンジ色の実が種子です。

画像の説明

 乾燥すると茶色で八角形の星形になります。
 「ん?見たことあるけど」と思われる方もいると思いますが、料理で使用する「八角(ハッカク)」とは異なります。
 姿形はそっくりですが、シキミは、実・種子・花・葉・茎・根に至るまで有毒で、特に果実に「アニサチン」を主成分とする有毒物質が含まれています。
 中毒症状は全身痙攣、嘔吐、意識障害など。ひどい場合は死に至ります。
 また、シキミの実は植物の中で唯一、『毒物及び劇物取締法により「劇物」に指定』されています。
 一般的には、仏事で使用される樹木として知られていますが、「毒性」は知られていないようです。
 現在でも、樹皮や葉を乾燥させて粉末にした「抹香(マッコウ)※」として用いられています。 
※「抹香」:葬儀の際に行われる焼香で用いられるお香のこと

 シキミの葉や枝を燃やすと、とても強い匂いを放つそうです(臭いを嗅いだことがないのでどんな香りなのか・・・)。
 古代から墓や仏に添える植物とされていたようです。現在のように亡骸を長時間保存する方法がなかった時代は、死臭を取り除くためにシキミを焚きこんで、臭いを臭いでごまかしていたのでしょう。
 今でも地域によっては、墓地にシキミの束と線香を一緒に添えているそうです。
 名前の由来は様々ですが、毒性が強いので「悪しき実」から転じた説、一年を通して時期構わず芽が出ることから「四季芽」と言われ言葉が転じた説、シキミの種は小粒でやや平べったいことから「敷き実」と呼ばれた説などがあるそうです。

【育て方】
 湿り気のある肥沃地を好みますが、土地自体はあまり選びません。成長はやや遅めなので剪定の手間も少なく、日当たりを好みますが、やや日陰でも問題なく育ちます。病害虫にも強いです。
 ただし、上記のような毒性が強い樹木です。子供がいるご家庭や場所、多くの人が往来するような場所には植えない方が無難でしょう。

トウシキミ

画像の説明

学名:Illicium verum
マツブサ科シキミ属 常緑高木
原産地:中国、ベトナム北東部
別名:ダイウイキョウ スターアニス
漢字表記:大茴香
樹高:15m程度
開花時期:年2回開花

 トウシキミは中国の亜熱帯地方地域で栽培されており、日本では薬用植物園の温室で稀に栽培されていて、めったに見る事はありません。紀元前2000年ころから栽培されており、野生種か栽培種かの区別は困難と言われています。
 樹高は10m~15mの高木になり、黄緑色や濃いピンクからオレンジ、エンジ色の花を付けます。収穫は年2回可能で、中国では9月~10月、3月~4月にかけて収穫されるそうです。
 トウシキミはダイウイキョウ(生薬名)やスターアニスと呼ばれ、甘く強い香りがあり、生薬や香辛料として利用されています。
 生薬としては、芳香性健胃薬として用いられ、最近では本種に含まれるシキミ酸がインフルエンザ治療薬の製造原料を引き出す化合物として注目を集めました(当然ですが、果実を食べてもインフルエンザには効果はありません)。

画像の説明

 一般的には、料理に使う香辛料としての方が有名でしょう。中国料理をはじめ、インド料理、マレーシア料理、インドネシア料理、ベトナム料理などに広く使われています。
 中華料理の五香粉(シナモン、クローブ、カホクザンショウ、フェンネル、チンピ、スターアニスの混合香辛料)にも使われています。
 飲み物だとチャイの中に。豚の角煮や中華風漬物にも使われていますよ。
 皆さんも、一度は口にしたことがあると思います。なんとなく味や香りの想像がつくかもしれませんね。
 その他の加工品としては果実部分や種子から抽出された油が、スターアニス油としてリキュールやブランデー、歯磨き粉、タバコ、香水などに使われています。また、アロマセラピーで、咳や腹痛の緩和や消化不良の軽減を促すために使用されます。薬用としても重要で、健胃作用や刺激作用、利尿作用、抗菌作用、感染症予防、殺虫作用などの効果があるとも言われています。
 
 「シキミ」と「トウシキミ」は果実がとてもよく似ています。     
   シキミの実       トウシキミの実

画像の説明

 トウシキミは食用としては問題ありませんが、私たちの身の周りには植わっていません。しかし、シキミは身近な庭木や山中に植わっていることがあります。

 調べていると、このような話が記載されていました。【文献:『毒草を食べてみた』(植松 黎著 文春新書より抜粋】

 戦前に日本からドイツに「日本産アニス」としてトウシキミと間違えて、シキミの実がスパイスとして輸出されてしまったことがあるそうです。1930年代にドイツの一家4人が、1950年代にシンガポールで80人近い人がカレー粉に紛れ込んだシキミの粉末で中毒を起こしたことがあったそうです。
 また、日本でも山中での自然教室に参加した子供たちが、シキミの種子を「シイの実」と間違えてシキミの種子を炒って、小麦粉に混ぜてパンケーキを焼いて食べたそうです。
 ひどい吐き気と痙攣で病院に担ぎ込まれ、数名は意識混濁状態を生じたそうです。何を食べたのか?シイの実だと思い込んでいるため原因がつかめず、現場検証をして初めて真相が明らかになったそうです。

【見分け方】
 シキミの実は八角形の先端に向かって太目で先は尖っています。トウシキミは先端に向かって徐々に細くなって先端は丸みがあります。
 見分けの方法は特徴を知っておくことです。また、自生樹木としてのトウシキミは存在しません。疑わしい実は口にしないことを覚えておきましょう。



 次は「サカキ」と「ヒサカキ」です。

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サカキ
学名:Cleyra japonica
モッコク科サカキ属 常緑小高木
原産地:日本、朝鮮半島、台湾、中国
別名:ホンサカキ、マサカキ
漢字表記:榊
樹高:2m~5m程度

 日本の本州中南部以西に自生する常緑広葉樹で、「榊」の漢字からも分かるように、神事に持ち入られ、神社境内で見ることができます。葉は大振りで光沢があり鋸歯はありません。葉脈も薄く、葉裏もつるんとしています。真っすぐに広がる枝葉は、紙垂れを付けて「玉串」として神前に供えやすいです。

画像の説明

 初夏にクリーム色の花を付け、秋から冬にかけて黒い実を付けます。
 名前の由来は、年中、葉が美しい緑で栄えていることから「栄える木」という説や神と人間界の境に植える木を意味する「境木」という説があります。
 サカキが用意できない寒い地域では、ツバキやクスの枝を代用として使う所もあるそうです。

【育て方】
 日当たりの良い場所を好みますが、日陰にも強く、特に場所を選びませんが、日当たりのよい場所は葉の緑が濃くなり、日陰だと枝が間延びします。
 移植は苦手ですが、病害虫には強いです。枝葉の出方は荒く、剪定の頻度が少ないと樹形は整いにくく、神棚用として育てるなら、枝抜き剪定を施し、自然形として育てましょう。



ヒサカキ

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学名:Eurya japonica
モッコク科ヒサカキ属 常緑小高木
原産地:日本
漢字表記:姫榊
樹高:4m~7m程度

 北海道を除く日本全国に生息する常緑樹です。年間を通して美しい葉を付けるため、サカキ同様縁起の良い樹木とされています。
 枝葉は真っすぐ伸び、葉の周囲には鋸歯があり、葉は密生します。

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 サカキが手に入らない場合、代用として使用されることもあります。
 春先にクリーム色の花を咲かせます。花はガス臭い独特の臭いがあり、「ガス漏れ」と間違われる方も多いようです。
 秋から初冬にかけて黒い実が付きます。実は水分を多く含み、小鳥が好んで食べに来ますよ。
 名前の由来は、小型のサカキを意味して「姫サカキ」の説やサカキに似ているがサカキではない「非サカキ」の説、実がたくさん付くので「実サカキ」が訛った説、日当たりを好むので「陽サカキ」の説などがあります。

【育て方】
 土壌は選ばず、湿気の多い場所であったり乾燥する場所でも育ちます。萌芽力が強く剪定にも耐えます。
 観賞用の樹木にはなりませんが、わりと日陰でも育つので、北側や日当たりの悪い場所に好まれます。ただし、風通しが悪くなるとカイガラムシが発生しやすくなります。

 「サカキ」「ヒサカキ」よく似た葉の神事に使われる樹木です。
 具体的に何が違うのか?と言われると説明しにくいですよね。でも、これを覚えておいてください。
 枝葉は真っすぐ伸びている部分は同じですが、サカキは葉が7~10cmほどで大きめで鋸歯がありません。ヒサカキは葉が3~7cmくらいで小ぶりで鋸歯があります。ヒサカキの方は葉が密生しています。
 神棚はサカキが基本ですが、代用としてヒサカキでも大丈夫です。
 最後に神棚に供えた場合、容器の中で雑菌がわきやすいので、すぐに腐ってしまいます。出来れば毎日水を入れ替えて、瓶はきちんと洗剤を使って洗い、サカキ、ヒサカキの切り口や葉も一緒に洗ってあげると長持ちしますよ。
 
 次は「ムクゲ」と「フヨウ」です。

ムクゲ

画像の説明

学名:Hibiscus syriacus
アオイ科フヨウ属 半落葉小高木
原産地:中国、東南アジア
和名:ムクゲ
別名:ハチス、キハチス、モクゲ
漢字明記:槿、木槿
樹高:2m~4m程度

 庭木として、街路樹や公園など広く植えられています。
 花期は7月~10月くらいに白、ピンク、赤、紫色の花を咲かせます。真夏の日ざしが強い中、他の植物が弱ってくる頃から元気よく花を咲かせます。
 花の大きさは5~10cm程で、一日花と誤解されやすいですが、朝開花し、夕方しぼんでしまう花もありますが、2~3日咲き続けます。八重は3日以上咲いています。

画像の説明

 夏の茶花としても使用されます。切り花の場合であれば、2週間くらいは楽しめます。
 ムクゲの葉は卵型で葉の縁にはランダムに鋸歯があります。幅は狭いですが3裂に切れ目が入り、長さは大きくて10cmほど、幅は5cm程です。
 中国原産で、インドや東南アジアまで広く自生しています。日本には朝鮮半島経由で古い時代に渡来したと言われています。
 今まで多くの園芸品種が生み出され、近年では海外で育成されたものが多く導入され、数多くの園芸品種が手に入るようになりました。

【育て方】
 日当たりと水はけのよい場所を好みます。樹の生育は勢いが強く、品種にもよりますが耐寒性、耐暑性もあり、北海道から沖縄まで生育可能です。
 花木なので剪定の時期を間違えると「花が咲かない」ということがありますが、萌芽力が強く、生育期に伸びた枝に花を咲かせるタイプなので、そこの所を心得ておけば、十分に花を楽しむことができます。
 実際の剪定適期は冬の落葉期(秋から春まで)、春から伸びた枝を切りたい場合は5月下旬くらいまでに切るとよいでしょう。
 背丈を気にしないのであれば、放任しても良いでしょう。自然形でもまとまった形になります。(直立した樹形)
植付け、植替えは落葉期に行いましょう。肥料は、冬の寒肥と生長が早く肥料を好むので6月に化成肥料を与えておきましょう。

フヨウ

画像の説明

学名:Hibiscus mutabilis
アオイ科フヨウ属 落葉小高木
原産地:日本、中国、台湾
和名:フヨウ
別名:モクフヨウ
漢字明記:芙蓉
樹高:2m~4m程度

 日本:四国、九州、沖縄、台湾、中国、済州島などを原産地とする落葉樹です。枝は直立して分かれ、上方のみでなく横へも広がりこんもりした樹形になります。
 花期は7月~9月にかけて、品種によりますが白からピンクの濃淡のある手のひらサイズの大きな花を咲かせます。
 花は一日花で、一つの花は短命ですが、最盛期には真夏の暑い時期でも次から次へと途切れることなく花を咲かせます。
 最近では、咲き始めは「白色」で、花びらが開き始めると「ピンク色」になり、夕方しぼみ始めるころ「濃いピンク色」へと時間経過で花色を変化させる八重咲のスイフヨウが人気です。
 フヨウは花を楽しむ以外にも、古くは樹皮を下駄の鼻緒にしたり、和紙の補強剤、縄などにも使われていました。
 葉は薄く丸型で幅は広く5裂に分かれ、全体に軽く鋸歯があります。

【育て方】
 日当たりの良い、やや湿り気のある場所を好みます。寒さは苦手です。
 肥料を吸う力が強いので、切れると葉色が悪くなります。冬の寒肥、6月と秋に化成肥料を株廻りに与えましょう。
 春から芽吹いた枝の先端や脇芽に花芽が出来ますので、剪定の基本は落葉時に行います。生育期に花芽が出来てすぐ開花するので失敗の少ない花木です。
 寒い地域の場合、根は生きていますが上体が枯れてしまう場合があります。枝を折ってみてパキパキ折れる場合は地際から15cmくらいのところで全部刈取ります。作業後はマルチングなどで養生しておくと春に出てくる芽が多くなります。
暖かい地方の場合は落葉しますが枝は枯れません。年々大きく成長するので細かい枝は切り詰めて樹形を小さくしておきましょう。間延びした枝や混んでいる枝も整理し、風通し、日当たりを良くしておきましょう。
 植替え、植付けは3月~4月が適期です。土壌には堆肥などをタップリ混入してから植えつけましょう。

 「ムクゲ」と「フヨウ」は真夏の炎天下に、よく似た花を咲かせます。
 よく観察すれば、花の大きさや葉の大きさ、花色の違いで見分けは簡単です。 もう一つは、花そのものは色合いが同じなので見分けにくいのですが、ムクゲの花の中央にある雌しべは分かれてなくて1本が真っすぐ伸びています。
 それに対してフヨウの雌しべは5本に分かれていて先端が曲がっています。
 両者とも、特徴がはっきりしています。この季節は花が終わっていますが、来年の夏に見かけたら観察してみてください。

 よく似ている植物は沢山あります。私たちでも見分けがつかなくて、実や種、樹皮の様子、葉の付き方等観察して調べます。
 今回は3つしか挙げられませんでした。
 実は「シキミの実」をいくつか持ってきて「これは八角ですか?」と、女性の方が尋ねてこられました。園芸店に置いてあった樹木に付いていた実を取られたそうです。
 説明をして、実はそのまま処分させて頂きましたが、「もしも」を考えるとゾッとします。
 植物は「よく似ていて名前が分からない」程度であれば問題はありませんが、食用になるもの、特に実や種子に関しては、今後もこのような毒性を持つ植物があれば知っておかなければなりませんね!
 皆さんも「知っているから大丈夫」ではなく、「もう一度調べてみよう!」と慎重になってみてください。

(18/11/01掲載) 

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